エッジの効いた精悍なスタイル 。全長は4.8m半ばをキープ
世の中に高級車は数多くあるが、メルセデス・ベンツEクラスほど高い信頼を得ているクルマは稀だろう。こうした定番車の新型移行は他モデルへの影響力が極めて大きい。
日本仕様として用意される新型Eクラスは、ベースモデルとなるE300のほかには、E300、E350、E550のアバンギャルドで都合4モデルというライナップ。本国ではすでにリリース済みとなっているスプレーガイデッド方式ガソリン直噴の350CGIや1.8L直4直噴ターボとした250CGIなどの新開発エンジンは未設定で、パワーユニットはひとまず先代からのキャリーオーバーだが、モデルとしては完全に一新された。
その中から今回試乗したのは、E350とE550のアバンギャルド。ちなみにE350はメカニカルサスペンションで、E550はエアサスペンションが標準装備となる。試乗は全車左ハンドル。右ハンドルの導入は8月から開始される。
ボディサイズは先代のW211に対し全長で20mm、全幅は35mm、ホイールベースは20mmと若干の拡大が図られた。全高は15mm低くなっているが、これはルーフ形状の変更によりアンテナがピークでなくなったためで、実質はほとんど変わらない。
ヘッドライトがW211の丸形4連から菱形4連に変わったのが、W212のスタイリング上の最も大きな特徴で、これに伴い全体にエッジの効いた精悍な雰囲気を身につけている。ただ、パッケージング的には新旧の間でとくに大きな変化はなく、4.8m半ばをキープした全長、ライバルの動向をもある程度見据えた1855mmの全幅ともに、Eセグメントの標準と言えるサイズ感に落ち着いている。経済性やエコの観点からも、これ以上の肥大化は避けたい。そんな想いが感じられる。
じゃっかんのサイズアップにより、後席の居住性は高まった
歴代のEクラスでは、実用車然としたボクシーな装いだった先々代のW210から、絞り込みを強め軽快感を増したW211になったときの変化幅の方が大きかったと僕は思う。ただ、そうした関係でW211のリアシートは意外に閉塞感が強く、広々とした雰囲気に欠ける傾向があった。W212はその反省からか、若干のサイズアップをとくに後席の居心地の向上に使っている。
実際、ベルトラインが高めで肩まわりの包まれ感が強いのは相変わらずなものの、レッグルーム、ヘッドクリアランスともに余裕を増しており、前にも比してアッパーミドルらしい快適な居住性が味わえた。また、従来のメルセデスは大柄で硬めのシートが特色だったが、新型では芯のしっかり感はそのままに表皮がソフトで丸みを帯びたデザインとなり、座り心地が格段に優しくなった。
コクピットはメルセデスらしい質実剛健さだ。ナビ画面はセンターのトップに据えられ、視認性を向上させている。シートは後席同様ソフトでまろやかな座り心地だ。シフトセレクターがステアリングコラムに移り、マニュアル操作はパドルで行うダイレクトセレクトの採用に伴って、フロアコンソールがスッキリ広々としたのも印象的。ここにはCOMANDシステムのコントローラーと大きめのカップホルダーが設けられる。
パーキングブレーキは相変わらず足踏み式で、インパネ下のレバーでリリースする。電制化は見送られたが、むしろこの方が操作が早いし、メルセデスの場合、ペダルもレバーも操作感がいいので、むしろ歓迎だ。