アウディが展開するスポーツバックの特徴と魅力
そもそも「スポーツバック」は、スポーティな「5ドアハッチバック」が由来と認識している。確かにいずれもトランクではなくリアゲートを持つスタイルではあるが、もはやハッチバックに限定されたモデルではなくなった。たとえばA5スポーツバックは「4ドアクーペ」と謳っている。つまり、「リアゲートの形状」というより「クーペフォルムのエレガントなスタイリング」のモデルと言い換えても良いのではないかと思う。
A5スポーツバックは、「美しさとスポーティな走りと実用性の融合」という初代A5からのコンセプトを継承し、2017年に2世代目へ進化した。そして2021年1月、エクステリアを大幅刷新、より一層スポーティに、そして美しさに磨きがかかり、A5としては初めて、ディーゼルエンジンモデルが設定された。まさにコンセプトとおり、スタイリッシュでありながら快適性、実用性も両立されているのが強みであり魅力だ。
一方のQ5スポーツバックはQ5に新たに追加されたモデルだ。アウディのSUVはQ8、Q7、Q5、Q3、Q2がラインナップされ、Q5はまさに真ん中に位置する。そしてQ5スポーツバックは、「クーペスタイルのスポーティなキャラクターと高い実用性」を兼ね備えたクーペSUVだ。
SUVとしては3番目のスポーツバックであり、他のモデル同様、流麗なルーフラインが特徴的だ。グレードはアドバンスドとラインの2種類。パワートレーンは、2L 直4ディーゼルターボエンジン+7速DCTの組み合わせのみで、ハイパフォーマンス版のSQ5スポーツバックに3L V6ターボエンジンが搭載される。本格的なSUVとしての性能を持ちながら、都会的なシーンにもマッチするオールラウンダーだ。
アウディ A5スポーツバックとQ5スポーツバックで、軽井沢までテストドライブに出かけた。往路はA5スポーツバックで、横浜から軽井沢まで約3時間の行程を一気に走った。夕方から夜にかけての移動だったため、ディテールのチェックもなく、いきなり走り出した。取材前にクルマのグレードさえも知らずに乗り込んだ次第だった。
運転し始めて間もなく、インストルメントパネル内のタコメーターを見て、初めてディーゼルエンジンであることに気がついた。試乗モデルは、アウディA5スポーツバックTDIクワトロアドバンスド。室内にいる限りはディーゼルであることを感じさせないほど静かで、金属音も気にならない。翌日、外でアイドリング音を聞いたらガラガラ音でディーゼルだと認識できたが。
ほぼ高速道路だったが、3時間のドライブは実に快適で疲れ知らずだった。足もとにブリヂストンポテンザS001が装着されていることからも、このクルマがスポーティなキャラクターであることが伺える。でも、まったく尖った性格ではない。正直、セダンに乗っているような快適性であった。
一般論としては、セダンと比べるとリアのバルクヘッドがないため静粛性で劣る、ということになるのだろう。今回、A4と直接比較していないので差異はわからないが、絶対評価として、十分に静か。ドライブフィールや操作系に関しても、不満や不便を感じることはなかった。
キャラ的にも、アウディらしいスポーティさは感じられるものの、全体的に薄味と思った。これ、褒め言葉のつもりだ。セダンは乗っている時も尖ったところがなく、降りた後に後味を残らないくらいが良いと思っている。そして、A5スポーツバックは、そんなセダンライクな上質でエレガントさを備えた走り味なのだ。
試乗後、スペック表を見比べてみた。A5のクーペに対しては数値を出すまでもなく、乗降性やリアシートの居住性、そしてトランク容量など実用性においてはスポーツバックの方が勝る。
ではA4セダンに対してどうかというと、全長は15mm短く、全高は20mm低い。ホイールベースは同じで、ラゲッジルーム容量は460L vs 465LでA5スポーツバックの方が若干ながら大きいのだ。A4にはディーゼルエンジンの設定がないので同じガソリンエンジン搭載モデルで比較すると、A5スポーツバックの方が51万円高い。セダン並みの実用性と快適性を兼ね備えながら、セダンほどフォーマル過ぎず、スタイリッシュでありながらカジュアルさも感じられるところがA5スポーツバックの最大の魅力ではないだろうか。