それぞれの特徴は明確で選ぶ基準は何を期待するか
意外に思われるかもしれないが、新型シビックはその振動減衰特性が際立って優れている。いや、最初に乗った時は不満を感じなかったA3でさえ、シビックを体験したあとだとちょっと物足りなさを感じるぐらいに、シビックのボディ減衰特性は素晴らしい。
このためクルマとの一体感が驚くほど強い。荒れた路面でタイヤが的確に追従する場面でも、この優れた減衰特性を備えたボディが役立っているのは間違いのないところ。また操舵系の支持剛性が高く、路面からのインフォメーションが的確に伝わってくる。
そのおかげで市街地からワインディングロードまで抜群の安心感を誇るが、機敏なハンドリングを目指した関係もあり、足まわりの設定はやや硬めだ。ソフトな乗り心地という面ではゴルフはもとよりA3シリーズにも一歩譲るが、これは個性の違いと捉えるべきだろう。
1.5L 直列4気筒ターボエンジンは、4車中で随一の最高出力182psを発生。しかも幅広い回転域でフラットなトルクをもたらしてくれるために扱いやすく、高速道路からワインディングロードまでダイナミックな走りが楽しめる。CVTもステップ感が明確で違和感が薄い。またエンジンブレーキがあまり期待できないA3やゴルフより、しっかりとした減速感も生み出してくれる。
この4台の中ではもっとも全長が長いシビックはスペース効率も良好で、後席着座時の膝まわり(実測値)はA3やゴルフを7cmも凌ぐで実に広々としている。ラゲッジルーム容量も452Lと4車の中で最大だ。ただし価格も立派で、試乗車のEXはゴルフにもほど近い354万円弱。プレミアムブランド的な存在感を示す。
4台中、どれが一番かを決めるのはかなり難しい。私は、ボディの振動減衰特性が気になるもののソフトな乗り心地を期待するならゴルフがお勧めだ。ビシッとしたスポーティな走りがお好みならシビックが最適だろう。その点、A3はバランスが取れていて幅広い層からの支持が得られそうだ。好みの話になるがスタイリングの点でも、私はA3の2車に強く惹かれた。いずれにせよ、悩ましい選択であるのは間違いなさそうだ。(文:大谷達也/写真:永元秀和)
アウディ A3セダン ファーストエディション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4495×1815×1425mm<4345×1815×1450mm>
●ホイールベース:2635mm
●車両重量:1330kg<1320kg>
●エンジン:直3 DOHCターボ+モーター
●総排気量:999cc
●最高出力:81kW(110ps)/5500rpm
●最大トルク:200Nm/2000-3000rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・47L
●WLTCモード燃費:17.9km/L
●タイヤサイズ:225/40R18
●車両価格(税込):472万円<453万円>
※<>内は「A3スポーツバック ファーストエディション」のもの
フォルクスワーゲン ゴルフeTSI スタイル 主要諸元
●全長×全幅×全高:4295×1790×1475mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量:1360kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1497cc
●最高出力:110kW(150ps)/5000-6000rpm
●最大トルク:250Nm/1500-3500rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・51L
●WLTCモード燃費:17.3km/L
●タイヤサイズ:225/45R17
●車両価格(税込):376万円
ホンダ シビック EX 主要諸元
●全長×全幅×全高:4550×1800×1415mm
●ホイールベース:2735mm
●車両重量:1370kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1496cc
●最高出力:134kW(182ps)/6000rpm
●最大トルク:240Nm/1700-4500rpm
●トランスミッション:CVT(7スピードモード付)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・47L
●WLTCモード燃費:16.3km/L
●タイヤサイズ:235/40R18
●車両価格(税込):353万9800円