クラシックMINIからのテイストに加わった高級感
ところが今回試乗した2台には、どこにもチープと呼べるものはなかった。モダンクラシカルといった個性的なデザインは初代以来のものだが、レザーとスチールを巧みに使ったインテリアには機能美のようなものさえ漂う。20年もの歳月をかけて磨きこまれたということだろう。そこには400万円台の高級車然とした高い質感が備わっていた。
また、走り味の方でも、同じような高級感があった。それは「タメ」だ。ステアリングの操作に対するクルマの動き、アクセル操作に対する加速感に、一瞬のタメがある。操作に対して、微妙に遅れて動く。それが不快ではなく、タメのある重厚感という良い印象に感じられた。そして、コンパクトなクルマなのにどっしりとした安定感もある。
もちろんパワーは十分。MINIはゴルフよりもひと回り小さいけれど、パワーは1.5倍以上もある。最新ゴルフ8の最高出力は、110ps〜150ps。つまり速さという面では、MINIの上級グレードではゴルフを軽々と上まわっているのだ。
ちなみに3ドアと5ドアの今回のモデル比較では、ガソリンターボ&DCTとディーゼルターボ&ATという違いはある。当然、ガソリン&DCTの方が振動やエンジンノイズが少なく、高回転の伸びが感じられるし、ディーゼル&ATの方が低速での粘りのある力強さがあった。しかし、その差は意外に小さく、根底に似たようなフィーリングが備わっていた。
もちろん、その根底のフィーリングにはMINIらしさも色濃くある。ショートストロークのサスペンションならではの路面のアンジュレーションをなめるような乗り心地や、上下に狭い運転席からの視野などだ。そうしたMINIらしさに重厚感をプラスしたのが、今どきのMINIなのだろう。そして、それを3ドアと5ドアで作り分ける。言ってしまえば、同じスープを使って、具材を変えた2品の料理のようなものであったのだ。
さらには、今回は試乗していないけれど、ワゴン(クラブマン)、コンバーチブル、SUV(クロスオーバー)といったボディバリエーションも選ぶことができる。JCW(ジョン・クーパー・ワークス)なんていう、とびきりスパイスをきかせたスペシャルメニューも用意されている。
つまり、最新のMINIには初代から続く個性的なデザインと走りが備わっているが、その風味にはさらに重厚感が加わっていた。ユニークで、ちょっと良いクルマが欲しいという人には、今のMINIがピタリとはまるのだろう。また、5ドアをはじめ、さまざまなボディバリエーションを選べるという利便性も効いているはずだ。
輸入車を欲しがる人の根底には「国産車にはないユニークさと、ちょっと良いクルマが欲しい」というニーズがあるはず。それに最もよく応えてくれるクルマが、MINIなのであろう。(文:鈴木ケンイチ/写真:鈴木ケンイチ、Webモーターマガジン編集部)
■MINI クーパーS 3ドア 主要諸元
●全長×全幅×全高:3880×1725×1430mm
●ホイールベース:2495mm
●車両重量:1270kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1998cc
●最高出力:141kW(192ps)/5000rpm
●最大トルク:280Nm(28.6kgm)/1350-4600rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:プレミアム・44L
●WLTCモード燃費:15.0km/L
●タイヤサイズ:205/45R17
●車両価格(税込):397万円
■MINI クーパーSD 5ドア 主要諸元
●全長×全幅×全高:4040×1725×1445mm
●ホイールベース:2565mm
●車両重量:1350kg
●エンジン:直4 DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1995cc
●最高出力:125kW(170ps)/4000rpm
●最大トルク:360Nm(36.7kgm)/1500-2750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:横置きFFR
●燃料・タンク容量:軽油・44L
●WLTCモード燃費:18.9km/L
●タイヤサイズ:205/45R17
●車両価格(税込):427万円