ついに日本へ導入されることになったベンテイガのプラグインハイブリッドモデル。電動化を進めるベントレーの今後の主力モデルに相応しい完成度を見せてくれた。(Motor Magazine2022年1月号より)

モーターのみでおよそ50km。その車内は静寂そのもの

ここで新型ベンテイガハイブリッドの概要をご説明しよう。エンジンは、現在ベンテイガの主力となっている4L V8ツインターボに代えて3L V6ターボを搭載。ここに128ps/350Nmを生み出す電気モーターを組み合わせることにより、システム総合で449psの最高出力と700Nmの最大トルクを生み出す。いずれも、ベンテイガV8の550psと770Nmに匹敵するスペックである。この結果、0→100km/h加速は5.5秒、最高速度は254km/hと、ベントレーの名に恥じない高性能を発揮する。

一方で、ベンテイガV8には真似できないのが電気モーターを用いたEV走行で、その巡航距離は前述のとおり約50km(NEDCモード)。またEV走行時の最高速度は135km/hに達する。

今回、試乗したのはベンテイガ ハイブリッドの国内発売を記念して設定されたファーストエディションで、内外装に専用バッジを備えているほか、ダイヤモンドキルティングには専用のコントラストステッチが施され、シートバックに「FIRST EDITION」のロゴが刺繍されている。そのほか、通常はオプションとなるツーリングスペシフィケーションを標準装備することに加え、パワフルで高音質なNaim(ネイム)for Bentleyのオーディオシステムなどが奢られている。

まずは、通常のベンテイガと同じようにセンターコンソール上のスタートストップスイッチを押してみるが、だからといってエンジンが始動されるとは限らない。バッテリーの充電量が一定以上であれば、無音のままシステムが立ち上がって走行準備が整うだけである。

そこでDレンジを選んでアクセルペダルを踏み込むと、これはレトリック(美辞麗句)でもなんでもなく、現実にほぼ「音もなく」走り始めた。その滑らかで自然な動き出しはベンテイガそのもの。ただし、ここまで静寂に包まれていると、なんとも特別な心持ちになる。これは私の勝手な思い込みかもしれないが、CO2を排出せずに走っていることで、なにやら気高い振る舞いをしているような気分が味わえるのかもしれない。

画像: 3LのV6ターボエンジンは340ps/450Nmを発生し、システム総合出力は449ps/700Nmとなる。エンジンカバーにハイブリッドのエンブレムが装着される。

3LのV6ターボエンジンは340ps/450Nmを発生し、システム総合出力は449ps/700Nmとなる。エンジンカバーにハイブリッドのエンブレムが装着される。

どんな状況でも十分以上の動力性能を発揮する

試乗車には285/40ZR22という大径タイヤが装着されていたが、少なくとも低速域で走らせている限り、路面からの衝撃を巧みに吸収してくれるので快適性は高い。これは最新のベンテイガに共通する傾向とはいえ、ハンドリングと乗り心地をバランスさせたBモードでもこれだけ滑らかな走りを実現しているのだから驚かざるを得ない。

ただし、路面がそれなりに傷んだ場所を通過すると、さすがに22インチタイヤが暴れるような素振りを見せた。そこでコンフォートモードを選択すると、その傾向はいくぶん弱まったものの、タイヤがバタつく印象は完全には消えていない。おそらく、21インチタイヤであれば、こういった傾向はずいぶん違っていただろう。

高速道路に足を踏み入れる。EV走行でも最高速度は135km/hに達するので、ハイウェイクルージングも基本的には静寂のまま楽しめる。ドライバビリティにもまったく不満は覚えない。一方で、力強い加速が必要な場面では、そのままアクセルペダルを大きく踏み込めば、タコメーターの針はEV DRIVEの領域から上に跳ね上がってエンジンが始動。2.6トンを超すボディを軽々と加速させていく。

山道でもその力強さはまったく変わらず、パワー不足はついに感じなかったが、積極的なコーナリングを試すと、ダンパーの伸び側減衰力がやや控えめな設定のためか、ボディの動きを落ち着かせるにはV8やスピードよりも少し時間がかかるような気がした。

もっとも、これはかなり極限的な状況で、一般的には滅多に経験することのない領域だから、心配は不要なはず。それよりも優れたロードホールディングを発揮し、ワインディングロードでも安定したハンドリングを示してくれることの方が、はるかに重要であるはずである。

いずれにせよ、ベンテイガ ハイブリッドはどんな状況でも十分以上の動力性能を発揮して私の期待に応えてくれた。足まわりはややソフト寄りに設定されているものの、ハンドリングや乗り心地にはほぼ不満を覚えなかった。ベントレー自身は、ベンテイガの中でこのハイブリッドが大きな販売比率を占めることを期待しているようだが、それも当然と思えるほどの完成度だった。

そもそもベンテイガ ハイブリッドには電動化を目指すベントレーの第一歩という意味が込められている。英国では、これに続くフライングスパー ハイブリッドも発表済みだから、日本にもほどなく上陸するはず。いずれにせよ、ビヨンド100の実現に向けて、ベントレーは着実に歩を進めていると言えるだろう。(文:大谷達也/写真:永元秀和)

画像: 他のモデルと同じくレザーやウッドパネルなど好みの組み合わせで仕上げることができる。試乗車はダークティントダイヤモンドブラッシュドアルミニウム仕上げ。

他のモデルと同じくレザーやウッドパネルなど好みの組み合わせで仕上げることができる。試乗車はダークティントダイヤモンドブラッシュドアルミニウム仕上げ。

ベントレー ベンテイガ ハイブリッド主要諸元

●全長×全幅×全高:5125×1995×1740mm
●ホイールベース:2995mm
●車両重量:2690kg
●エンジン:V6 DOHCターボ+モーター
●総排気量:2994cc
●最高出力:250kW(340ps)/5300-6400rpm
●最大トルク:450Nm/1340-5300rpm
●モーター最高出力:94kW(128ps)
●モーター最大トルク:350Nm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・75L
●WLTPモード燃費:29.4km/L
●タイヤサイズ:285/45R21
●車両価格(税込):2269万円

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