一見奇抜なデザインだったり、そこまでしなくてもと思うほどの走行性能だったり、使い切れないほど多機能だったり・・・こうした強い個性を持つクルマはこれまで数え切れないほど登場し、数年で消えていくこともあった。ここでは数ある星の中から1990年代〜2000年代に登場した「個性が強すぎる」国産車にスポットライトを当てて解説していこう。今回は、1997年4月に登場したいすゞのクロスオーバー「ビークロス」だ。

実は現代のCセグメントサイズ。コンパクトSUVの先駆けだった

市販時にはボディのみならずエンジンも拡大される。搭載されたのは最高出力215psを発揮する3.2L版のV6 DOHCのみで、これに4速ATと電子制御トルクスプリット式4WDを組み合わせていた。2ドアクーペ版ゆえ乗車定員は4名。スタイル優先のため後方視界はイマイチだった。それに対応すべく先進のバックアイカメラを搭載しモニターで確認していた。今や軽自動車でも採用しているが、20年以上も前にバックカメラを採用したのはまさに先進だった。

画像: 全長4130×全幅1790×全高1710mmと、意外とサイズはコンパクト。スペアタイヤカバーと一体化したリアゲートもユニークだった。

全長4130×全幅1790×全高1710mmと、意外とサイズはコンパクト。スペアタイヤカバーと一体化したリアゲートもユニークだった。

ビークロスは上背があるため大きく見えるが、3サイズは全長4130×全幅1790×全高1710mmで、ホイールベースも2330mm。現代のCセグメントに相当するサイズで、意外なことにコンパクトだったのだ。ボディカラーは当初5色だったが、97年11月になんと20色を追加して25色を揃えるに至る。それでもヒット作とはならず、1999年2月に175台限定発売された175リミテッドエディションをもって、コンセプトモデルから数えて6年余の歴史に幕を閉じたのである。

ビークロスは、このままのスタイリングで4ドア化(リアのノブは隠して)し、エンジンは2Lあたりにダウンサイジングし、それでPHEV化でもすれば、21世紀に入って20年が過ぎた今でも十分通用しそうなデザインだ。それだけに、デザイン力があったいすゞが2002年9月をもって乗用車の生産を中止したことを、「惜しい」と思うクルマ好きは少なくないことだろう。(文:河原良雄)

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