2021年11月4日に登場したBMW iX。i3以来、実に7年振りの電気自動車(BEV)となるiXに、早くも試乗することができた。このSUVタイプのBEVにはBMWらしさはあるのだろうか。そうしたことを確認したファーストインプレッションを報告する。

BMWで初めてカーブドディスプレイ、六角形ステアリングホイールを採用する

インテリアに目を移すと、まず視界に入るのが大きなディスプレイだ。メーターパネルとコントロールディスプレイの2枚を横に並べ、ドライバーに向かってわずかに角度が付けられたカーブドディスプレイを採用する。これもBMWとしては初の試みだ。そして興味深いのがステアリングホイール。なんと六角形デザインとなっている。これもBMW初だろう。

センターコンソールやフロント&リアドアパネル、ダッシュボード下部の表面が暖かくなるヒートコンフォートパッケージを標準装備する。実際に試すと今のような寒い時期にはとても快適な機能である。オプションのファーストクラスパッケージを選択すると、電動シート調整スイッチ、iDriveコントローラー、スタートストップボタンはクリスタル製となる。これらは高級感にあふれ、実に美しいアイテムだ。値段が値段なので、これだけでiXを買う価値があるとまでは言わないが、オーナーとしてはとても嬉しいポイントだろう。

画像: カーブドディスプレイのメーターパネルとコントロールパネルは一体化されている。六角形のステアリングホイールもユニーク。

カーブドディスプレイのメーターパネルとコントロールパネルは一体化されている。六角形のステアリングホイールもユニーク。

BEVにエンジンサウンドはないので基本的に無音。だから各ブランドはBEVサウンドを作り込んでいる。iXも同様で、Sport/Personal/Efficientというドライビングモードでサウンドが変化するアイコニックサウンドエレクトリックは映画「パイレーツ・オブ・カビリアン」の作曲を担当したハンス・ジマー氏によって作り込まれたものだという。今後はこのエレクトリックサウンドが、BMWのBEVらしい音となるのである。

インテグレーテッドアクティブステアリングは、低速時に後輪を前輪と逆位相に最大3.2度、高速域で同位相に2度操舵する。その効果もあり、走りは実にクイック。ボディは操舵やペダル操作にダイレクトに反応する。このあたりは実にBMWらしいところを感じられた。ちょっとした小山のような塊感のあるボディを軽々と動かすのだから驚きである。

今回の試乗時間は半日ほど、しかも搭載されている機能があまりに多すぎて、すべてを使いこなすまでには至らなかった。それでも、シート快適機能(マッサージ)や駐車時のカメラ機能、ACC、また音声操作によるナビの目的地設定やルート案内のキャンセルといった操作を試してみたが、すべて合格点。つまり使える装備だと言える。また4輪アダプティブエアサスペンションは、任意に車高を+20mmまたはー10mmに設定することも可能で、走行状況に合わせそれぞれの車高で走ることができるのである。悪路は車高を上げて、高速道路は下げて、といった具合にだ。

フロントとリアのカメラをウオッシャーが自動洗浄

画像: フロントシートは新開発のヘッドレスト一体型。レザーの地は天然のオリーブの葉の抽出物で表面を仕上げている。

フロントシートは新開発のヘッドレスト一体型。レザーの地は天然のオリーブの葉の抽出物で表面を仕上げている。

ADAS(先進運転支援システム)用のカメラはこれまでBMWが採用していた3眼タイプから単眼カメラへ変更されている。これは単眼カメラの性能が向上したことで1基で3基分の性能を発揮することができることになったからである。ADASはドライビングアシストプロフェショナルを標準装備。これにはACCや車線変更警告システム、事故回避ステアリング、前車接近警告機能、後車衝突警告機能、ペダル踏み間違い急発進抑制機能など先進機能が装備されている。

面白い、いや便利な機能としてフロントとリアに装備されているカメラの洗浄機能がある。これはカメラが汚れたときに、コントロールディスプレイでフロントまたはリアまたはフロントとリアを選んで洗浄できるというもの。しっかりと洗浄するため、かなりの勢いでウオッシャーから洗浄液が噴出される。

5m近い大きな全長、3mのホイールベース、2.5トンの車両重量など、軽量コンパクトなBEVではないが、後輪を操舵するアクティブステアリングや全方位をカバーするカメラ、そしてシステムトータル出力385kW/765Nmという圧倒的なパフォーマンスのおかげもあり、走っていると大きさを感じさせなかった。ADASの充実もあり、このiXはボディの大きさは頼りがいのある安心感さえ味わわせてくれた。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:永元秀和)

画像: 圧倒的なパフォーマンスにより、走っていると大きさを感じさせない。

圧倒的なパフォーマンスにより、走っていると大きさを感じさせない。

■BMW iX iDrive50 主要諸元

●全長×全幅×全高:4955×1965×1695mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2530kg
●モーター:交流同期電動機
●最高出力:190kW+230kW
●最大トルク:365Nm+400Nm
●システムトータル最高出力:385kW
●システムトータル最大トルク:765Nm
●バッテリー総電力量:111.5kWh
●一充電走行距離:650km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:255/50R21
●車両価格(税込):1116万円

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