巨大なスワンネックタイプのウイングを装備したポルシェ 911GT3に続いて、その公道仕様という位置づけの911 GT3ツーリングパッケージが発売された。今回は1週間、約600㎞を走ってわかった、その素顔をレポートする。(Motor Magazine2022年1月号より)
レーシングカーを、本当に公道で快適に使用できるのだろうか
911GT3ツーリングパッケージは「大げさなトリムを外してレーシングカーを公道で走らせたい!」と願うオーナーの要望で誕生したモデルだ。その起源は1972年のカレラ2.7RSで、そして1999年のGT3から復活、993、991、992と継承されてきた。
しかし、果たしてレーシングカーを本当に公道で快適に使用できるのだろうか。数カ月前の試乗会はコースと時間が限られていたので今回は十分な時間をとって、改めてさまざまな条件下でテストしてみることにした。
GT3ツーリングパッケージとGT3とのもっとも大きな違いはリアのスワンネックウイングが省略されているだけで、パワートレーンやシャシなどメカニカルコンポーネンツは共通だ。4Lの自然吸気6気筒ボクサーエンジンの最高出力は510ps、最大トルクは470Nmに達する。
リアエンドには911カレラのように可変スポイラーがたたみ込まれ、「GT3 Touring」のバッジが貼られている。ただしカーボン製のフロントボンネット先端の二分割エアアウトレット、そしてリアのディフューザーとその中央から突き出たエキゾーストパイプを見れば、この911がただモノではないことはポルシェのファンならずともすぐにわかる。
左手でイグニッションキーを回すとタコメーターに「GT3 Touring」の文字が現れる。トランスミッションは6速MT、あるいは今回のテスト車である7速DCT(PDK)が追加料金なしで選択できる。
短いクランキングでフラット6が目覚めると、ソリッドな振動が伝わってくる。これは軽量化のためにアクティブエンジンマウントを省略してダイレクトにボディに固定されているためだ。