いまや希少な存在となってしまったセダンタイプ軽自動車
1979年に初代がデビューして以来42年、8代にわたって約526万台を販売されてきたアルト。だが、いまや軽自動車のメインストリームはスライドドア付きのハイトワゴンとなり、2020年度に販売された軽乗用車の約52%がスライドドア車、アルトのようなセダンタイプは約11%となっている。多くの軽自動車メーカーはセダンタイプの自主生産をやめ、コンベンショナルなモデルとして残っているのはアルトとダイハツ ミラだけになった。
「それでも、アルトのようなクルマを求めているお客様はいらっしゃいます。ワゴンRの廉価版ではダメなのです」と、アシスタントチーフエンジニアの渡邉 司氏は語る。そうした彼らの思いを結集させた新型アルトは、予想以上に(失礼!)よくできたベーシックカーだった。
従来型より全高を50mm高めて、フロントウインドーも少し立たせたスタイリングは正解だ。乗り降りもしやすく、その立体感のあるフォルムは、黄色いナンバープレートがなければヨーロッパの小型車っぽくも見える。ベーシックカーの基本に立ち返ったスタイルに好感が持てる。
インテリアも、質感が高められデザインもけっこう凝っており、もはやチープシックとは呼べなくなった。デニム調シート地の質感や色合いも悪くない。このクラスの軽自動車は女性ユーザーを意識したインテリアデザインとされることも多いが、これなら男性でも気恥ずかしく感じることもない。メーターも見やすく、スイッチ類も操作しやすい。
なお、今回の試乗車は「少しでも早く新型アルトに乗ってもらいたい」という思いから、注目していたディスプレイオーディオやモニター用カメラなどのオプションを装着していないオーディオレス仕様。そのため、これらの機能は次の機会にでもあらためて紹介したい。
今回の試乗は、カメラマンと2人乗車で撮影機材など20kgほどの荷物を積載。つまり、小学生くらいの子どもがいる親子3人で乗っているようなもの。このシチュエーションで市街地から走り出したが、パワー的には不満ないレベルにある。発進時や中間加速でマイルドハイブリッドのモーターがアシストしてくれるので、思ったよりしっかり加速してくれる。