2021年12月21日に登場した「ゴルフ TDI」。最新ディーゼルエンジンを搭載する新型ゴルフTDIにとって、日本市場でのライバルとはどんなモデルとなるのだろうか。そう考えてみたが、車両価格を勘案すると直接的なライバルを特定するのはなかなか難しい。そこでここでは興味本位的なライバルとして、MINI 5ドアのディーゼル仕様、そしてゴルフのガソリン仕様を連れ出して比較してみた。(Motor Magazine 2022年3月号より)

明確な個性があるMINI。元気に走らせると楽しい

新型ゴルフTDIのライバルとして、身内のゴルフeTSIとMINIクーパーD5ドアだと聞かされて、最初は自分の頭の中にクエスチョンマークが浮かんだ。日本でゴルフTDIをジャンル分けするならば、輸入Cセグメントディーゼル車となる。どう考えてもそれほどニッチなマーケットには思えないが、具体的な車種を挙げるとなると意外に難しい。

たとえばメルセデス・ベンツにはA200dが、そしてBMWには118dがあるものの、どちらもプレミアムブランドだけあって前者は468万円、後者は436万円と少々値が張る。ちなみにゴルフTDIは、装備が充実した取材車のアクティブ アドバンスで398万9000円、基本グレードとなるTDIベーシック アクティブなら344万4000円の設定。やはりメルセデス・ベンツとBMWは、ひとクラス違うようだ。

今回連れ出したMINIも本来はプレミアムブランドだが、MINI 5ドアはBセグメントとCセグメントの中間的存在ということもあり、クーパーD 5ドアの価格は359万円と、ゴルフTDIよりむしろお買い得。本当は、新型プジョー308があればかなり興味深い戦いになったはずだが、残念ながら日本ではまだ正式発表前だ。というわけで、前述のゴルフ eTSIを含めた3台での比較テストを行うことにした。

画像: 最新型とはいえゴルフTDIモデル(前)で外観的にとくに目立つポイントはない。MINI(後)の存在感はやはり格別。

最新型とはいえゴルフTDIモデル(前)で外観的にとくに目立つポイントはない。MINI(後)の存在感はやはり格別。

まずは、個性的なMINI クーパーD 5ドアの印象から記そう。2021年5月にマイナーチェンジを受けたMINIは、内外装がリファインされるとともに、ストップ&ゴー機能付きアダプティブクルーズコントロールやレーンデパーチャーウォーニングなどの安全装備が充実し、コネテクティビティも機能強化が図られた。

これまで、MINIのスタイリングといえば「MINIらしさ」を最優先しつつ、その中で新たなディテールを提案するといった手法に終始してきた。だが今回のフェイスリフトではフロントバンパーの中央部だけを切り取ってその周囲をブラックとクロームのパーツで縁取りしたり、ルーフにはオプションながら前から後に向けて色が徐々に変化するという凝った塗装「マルチトーンルーフ」が設定されることになった。

このルーフペイントは「もしも、塗装ラインで前を流れるクルマの塗料が後のクルマの塗料に混じったら、どんな色になるだろうか?」という発想から誕生したものだという。というわけで、もともと特徴的な出で立ちのMINIが、今回のフェイスリフトでさらに個性的に生まれ変わったが、試乗した印象も、その外観と同じで極めて個性的であった。

直列3気筒1.5Lのディーゼルターボエンジンは、始動時にエンジンがブルブルと揺れたり、低回転域では軽いこもり音が発生したりと、やや古くさい印象がなきにしもあらず。だが、ペースを上げるとエキゾーストサウンドは抜けのいい音色に変わり、ドライバーの感性を心地良く刺激し始める。

こんな調子で、とにかくMINIは元気に走らせたほうが楽しく、そして魅力が増していく。その最高出力と最大トルクは116psと270Nmで、2Lディーゼルターボエンジンを搭載するゴルフTDIには明確に引き離されている。だが、パワーバンドに入った途端にいきなり活気づくその特性はなかなかドラマチックで、スポーティな走りが好きなドライバーにぴったり。反対に、のんびり走りたいドライバーには忙(せわ)しなく、またやや扱いにくいエンジンと言えるかもしれない。

足まわりの仕上がりにも似たところがあり、低速域ではゴツゴツという振動が路面から遠慮なく伝わってくる。このため、ヘッドレストに頭を軽く預けておくと、クルマが前後へ揺れるたびに後頭部が跳ね上げられて、かなり煩わしい思いをすることになる。

ところが、ワインディングロードに挑む際のハンドリングは正確で、ロール角を最小限に留めたまま俊敏にコーナーを駆け抜けて行ける。しかも、そんな時でもリアのスタビリティは良好なので、安心感は強い。つまり、パワートレーンにしてもシャシにしても、元気に走ることを前提にしているのがMINIなのだ。

インテリアの作りは凝っているし、シートに使われているオプション設定のレザー素材もこのクラスとしては実に上質。そんなこだわりのデザインと活発な走りこそが、MINIの真骨頂と言っていいだろう。

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