タイトなシートに身体を沈めて、イグニッションスイッチをオン。激しい初爆音とともにV10エンジンが目覚めると、その鼓動が胸に伝わってくる。パドルを引いてアクセルペダルを踏み込めば、見た目も中身もレーシングカーそのものであるウラカンSTOが走り出す。公道で全開にはできないが、それでもランボルギーニのDNAを全身で感じることができた。(Motor Magazine 2022年4月号より)

レーシングカーの技術を凝縮公道でもサーキットでも最強

なにも知らずにこのクルマとバッタリ出会ったら、「なぜ、レーシングカーがこんなところを走っているのか?」と訝しく思うことだろう。フロントの低い位置にはチンスポイラーが大きく張り出し、エンジンカバー上には大量の吸入気を取り込むためのエアスクープが設けられている。

その後方に見える「シャークフィン」はルマン24時間を戦うレーシングスポーツカーでお馴染みのもの。リアエンドに屹立した巨大な固定式リアウィングも、このただならぬ出で立ちのスーパースポーツカーにぴったりの装備といえる。

その名もウラカンSTOは、モータースポーツを戦うウラカンにオマージュを捧げるモデルだ。STOは「スーパー トロフェオ オモロガータ」の頭文字。スーパートロフェオはウラカンを用いたワンメイクレースで、イタリア語のオモロガータは英語に訳すとホモロゲーション、つまり認証の意味なので、モータースポーツの通例に照らし合わせれば「スーパートロフェオの認証を得るために製作されたロードカー」と解釈できる。

ただし、ウラカンSTOの場合はまるで逆で、「公道走行できる認証を得たスーパートロフェオモデル」を意味するらしい。つまりはレーシングカーベースのロードカーということ。だとすれば、冒頭で紹介した驚きも、あながち的外れではなかったことになる。

ここで古くからのスーパーカーファンであれば「なにをいうか。ランボルギーニがレースに参戦するはずがない」と異議を申し立てたくなるところだろう。創設者のフェルッチオ・ランボルギーニはレース嫌いで知られており、自身の名を冠したスポーツカーでレースに参戦することを許さなかった。

ただし、フェルッチオが経営を離れてからのランボルギーニは幾度となくモータースポーツに挑んでおり、1989年から1993年にかけてはF1エンジンを供給。1990年のF1日本GPで鈴木亜久里の表彰台獲得に大きく貢献したことは皆さんもよくご存じだろう。

現在のランボルギーニは、ウラカンをベースにしたGT3車両を開発して各国のプライベートチームに供給しているほか、前述のとおりスーパートロフェオという名のワンメイクレースシリーズを世界各地で開催している。ちなみにウラカンGT3で参戦するデイトナ時間では2018年から3連覇を達成した。ウラカンSTOは、こうしたモータースポーツ活動で得たノウハウを余すことなく注ぎ込んだモデルなのである。

レーシングカーと見紛うばかりのエアロダイナミクスデバイスをウラカンSTOが備えていることはすでに紹介したが、STOはボディパネルの実に75%をカーボンコンポジット製とすることで大幅な軽量化を達成。乾燥重量はウラカンEVOよりも近く軽い1339kgと発表されている。

お馴染みの自然吸気V10エンジンの最高出力は640psでウラカンEVOと並ぶが、4WDとなるEVOと違ってSTOは後輪駆動。この場合、スタビリティの観点から最高出力を低めに設定するのがランボルギーニの流儀だが、前述のとおり、なぜかSTOだけは例外とされている。

その理由は、STOのエアロダイナミクスが最大で420kgものダウンフォースを発生できることに加え、STOには後輪駆動のEVO RWDにはない4WSを装備してリアタイヤのグリップを増強。これによって十分なトラクションを確保したことが理由だと推測される。さらにいえば、EVO RWDより27mm広いSTOのリアトレッドも、640psのパワーを受け止めるうえで大きく役立っているはずだ。そんなウラカンSTOを、今回は公道で試乗した。

画像: ランボルギーニのレーシングスペックを公道で味わうことができる。その歓びを噛み締めながらアクセルペダルを踏みこむ。

ランボルギーニのレーシングスペックを公道で味わうことができる。その歓びを噛み締めながらアクセルペダルを踏みこむ。

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