理想を実現するための緻密なシナリオを描き、確固たる信念とともに実践し続けるBMW。今回の特集では i:電動化、M:スポーツドライビング、X:4輪駆動という3つのキーワードを軸として、未来を見据えたストーリーを感じ取ってみたい。その第1回は2021年11月4日に登場した次世代BEV(電気自動車)「 iX(アイエックス)」の真価を感じ取ってみた。(Motor Magazine2022年4月号より)

車両重量を感じさせず、乗り心地は非常にソフト

さて、システムのスタートストップボタンはセンターコンソールの右側前方にある。これまでの丸いボタンからクリア仕様の小さな長方形になった。その手前に同じくクリア仕様のセレクターがある。RND/Bという表示だけでPレンジの位置はない。

駐車時はEPB(電子パーキングブレーキ)スイッチを押すとパーキングブレーキが作動し、同時にPレンジに入る。また、駆動可能な状態から直接スタートストップボタンを押してオフにすれば、自動的にPレンジに入る。

走り始めると、2.5トンあまりという車両重量を感じない軽快な動きで気持ちがいい。アクセルペダルのゲインは高くないから、スムーズなドライビングが楽にできる。ハンドリング性能も、フロント側の重量が軽めになっているから向きを変えるのは楽だし、コーナリングしている時でも4輪で路面を掴む感触もある。

画像: iXは上位モデルとなるxDrive50、そしてバッテリー容量を抑えて一充電走行距離を450kmにするとともに装備仕様を抑えたxDrive40(1070万円)を設定。xDrive50のインテリアはスイート仕様が標準。六角形のハンドルデザインにも驚く。

iXは上位モデルとなるxDrive50、そしてバッテリー容量を抑えて一充電走行距離を450kmにするとともに装備仕様を抑えたxDrive40(1070万円)を設定。xDrive50のインテリアはスイート仕様が標準。六角形のハンドルデザインにも驚く。

もちろん、深く踏み込めばホイールスピンもせずに強烈な加速をするが、なぜかそんな加速を楽しむとか、スピードを出す運転をする気にはならない。これはiXのキャラクターなのか、BMWのクルマとしては珍しい印象だといえる。BMW自身が「従来のBMW」のイメージから脱皮し始めたのか、あるいは「i」というサブブランドの位置付けからくる味付けなのか、興味深いところだ。

飛ばさなくても、iXの運転は楽しい。アイコニックサウンズが擬似エンジン音を出してくれるしBEVだからアクセルオフのときは回生ブレーキが作動するが、このときも加速時とは違う音色を聞かせてくれる。アイコニックサウンズをオフにして静かに走ることもできるのだが、その際にはタイヤノイズの小ささも実感できた。

オプション設定の275/40R22 107YXLというサイズのタイヤ(ブリヂストンのアレンザ001☆)を履いていたが、よく見るとEVのシンボルマークが刻まれているし「Bサイレント」の文字も入っている。これは、タイヤ内側にキャビティノイズを消すスポンジが入るもので、BEV用に開発されたものだろう。

さらに、ランフラットタイヤではないことも、新時代のBMWの始まりかと思わせる。乗り心地は非常にソフトで、とくにタイヤのエンベロープ特性(トレッド面が路面の突起物から受ける力を包み込んで衝撃を吸収する性能)が良さそうで、ソフトタッチのベルベットの上を走るような気持ち良さだ。

回生ブレーキの度合いは高い/普通/低いの3段階の他にアダプティブのモードもある。試乗中はアダプティブモードが楽で扱いやすかった。アクセルオフにしたとき、前方に障害物がなければそのままセーリングのように走り、前方のクルマに近づくと徐々に回生ブレーキが働いて減速してくれる。15km/hくらいまではブレーキペダルに足を触れなくても速度を制御。ACCが使えない一般道などで重宝するシステムだ。

iXはユーザーに向かって挑戦しているのだろうか。最新技術にどこまでついて来られるかと試されている気がした。(文:こもだきよし/写真:永元秀和、井上雅行)

BMW iX xDrive50 主要諸元

●全長×全幅×全高:4955×1965×1695mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2530kg
●モーター:交流同期電動機
●モーター最高出力:前190kW(258ps)/8000rpm、後260kw(313ps)/8000rpm
●モーター最大トルク:前365Nm/0-5000rpm、後400Nm/0-5000rpm
●バッテリー総電力量:111.5kWh
●WLTCモード航続距離:650km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:前255/50R21*
●車両価格(税込):1280万円
*取材車はオプションの275/40R22を装着

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