「i」ブランドの理念を現実のものとした最初のモデルは、2011年のフランクフルトモーターショーでコンセプトモデルとしてデビューし、2013年に生産が開始された「i3」だった。そして、単にBEVということではなく、カーボンニュートラルを目指した「iコンセプト」のパイオニアとして登場した「i3」は、「i」ブランドの発展を確認してまもなくその役割を終えようとしている。そこでここでは最新仕様の「i3」をとおして、「i」ブランドの意義を改めて見つめてみる。(Motor Magazine2022年4月号より)

着実に熟成された乗り味。その本質は後継車に活用

i3の発売が開始された2014年ごろは、充電できる場所が少なかった。そこで、航続距離が心配なユーザーのために2気筒647ccのBMWオートバイ用エンジンを発電機用として搭載したi3 REX(レンジエクステンダー装備車)を、BEV版と並行して発売。すると、ほとんどの人はi3 REXの方を選んだ。

i3は後輪を駆動する。リアに搭載されるモーターの最高出力は125kW(170ps)/5200rpm、最大トルクは250Nm/100-4800rpmで、REXでも車重は1440kgと軽量だ。最新のi3 REXは充電電力使用で295kmの航続距離を誇り、REXを使うことでさらなる距離の延長が可能だ。

バッテリー容量は、デビュー当時は22kWhだったが2016年に33kWhと50%アップし、最新モデルは42.2kWhになっている。床下に収められるリチウムイオンバッテリーの体積は同じでも、密度が増しているのだ。

後輪駆動だからこその鋭い加速が可能だというのは、自分がi3でEVレースに参加することで体感した。当時、予選タイムはテスラ勢やSタイヤを履いたリーフなどが速く、タイヤも含めて完全ノーマルのi3は中団以降に埋もれてしまう。だが決勝レースのスタートでは、筑波サーキットの第1コーナーまでにごぼう抜きし、トップのテスラのすぐ後ろの2位まで駆け上がることができた。

今回久しぶりに最新のi3に乗ってみたら、以前よりも乗り心地が良くなっていた。i3もBMWらしく熟成が図られているのだろう。サスペンションが良く動き、ストローク感があるので、乗員が揺すられる感じが小さくなった。

i3で採用されたワンペダルドライビングだが、ドライバー本人は良いが、同乗者が辛くなりやすいという欠点がある。アクセルペダルを戻すと、強制的に回生ブレーキが働いて減速するからだ。新しいiX、そしてiX3は、回生ブレーキのアダプティブ制御によって最適解を得たといえる。(文:こもだきよし/写真:永元秀和、井上雅行)

画像: クリーンでモダンな造形のインテリア。販売面での苦戦は残念。

クリーンでモダンな造形のインテリア。販売面での苦戦は残念。

BMW i3エディションジョイ+レンジエクステンダー装着車主要諸元

●全長×全幅×全高:4020×1775×1550mm
●ホイールベース:2570mm
●車両重量:1440kg
●モーター:交流同期電動機
●モーター最高出力:125kW(170ps)/5200rpm
●モーター最大トルク:2500Nm/100-4800rpm
●エンジン:直2DOHC
●エンジン総排気量:647cc
●エンジン最高出力:28kw(38ps)/5000rpm
●エンジン最大トルク:56Nm/4500rpm
●充電電力使用時走行距離:295.0km
●バッテリー総電力量:42.2kWh
●駆動方式:RWD
●タイヤサイズ:前155/70R19、後175/60R19*
●車両価格(税込):555万円
*取材車はオプション装備の前155/60R20、後175/55R20

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