「リチャージ」への進化で時代の流れを巧みに反映
昨今、自動車業界は」100年に一度の変革期」と言われているが、その中での必須課題となるのがCO2問題・・・つまりカーボンニュートラルである。その実現のためにはパワートレーンの改革が必須であり、さまざまな選択肢が存在する中で、欧州勢は電動化に舵を切る戦略を取っている。
その中でもスウェーデンのボルボは2030年に電気自動車(BEV)だけのブランドになると宣言。それに先駆けて、日本市場では2020年にすべてのモデルが電動パワートレーンを搭載したモデルに変更された。つまり、ピュアな内燃機関モデルはラインナップから消え、いち早く「電動化100%」を完了したワケだ。
ひと昔前のボルボは、自動車業界のさまざまな動向に対してどちらかと言うと保守的であった。だがここ最近は、安全運転支援デバイスの全車標準化、エンジンの集約(3気筒/4気筒ガソリンターボ)、サブスクリプションサービスの展開、Googleインフォテインメントの活用、そしてレザーフリー対応など、むしろ「自動車業界初」が勢揃いという積極的な動きを見せる。このあたりはスモールプレイヤーだからこそ可能な部分もあるが「選択と集中」を上手に活用しているような気がする。
電動化に関しては、先日BEV専用車となるC40の発売が日本でもスタートしたが、直近のビジネスの中心はハイブリッドモデルである。そのシステムはISGM(インテグレーテッド スタータージェネレーター モジュール)とリチウムイオンバッテリーを搭載した「48Vマイルドハイブリッドシステム」、そして高出力なモーターと大容量バッテリーを搭載して外部からの充電が可能な「リチャージプラグインハイブリッド」の2種類だ。このパートで紹介するのは、後者のリチャージプラグインハイブリッドのモデルたちだ。
このPHEVシステムはフロントにガソリンエンジンと電気モーター、リアに電気モーターを搭載した電動AWDであり、新世代ボルボの導入当初からラインナップされている。当時は「ツインエンジン」と言うネーミングで最上級モデルに位置づけられた。そして、100%電動化を機に外部充電と言う意味を含めた「リチャージ プラグインハイブリッド」へネーミングを変更。それに合わせて、ポジションも電動化モデルの「上級版」と言う立ち位置となっている。
そのシステムも、年々進化を遂げている。2020年の改良では駆動用バッテリーの容量アップでEV航続距離を向上。さらに22年に実施された改良は大規模で、エンジン/モーター/バッテリーを一新。具体的には2L直列4気筒ターボエンジンは高効率化とドライバビリティの改善を目的にスーパーチャージャーの廃止とCISG(クランク インテグレーテッドスターター ジェネレーター)の出力を向上。加えてリアモーターは107kWに出力を向上(従来比65%向上)、バッテリー容量もアップ(18.8kWh/従来比60%向上)。これによりEV走行時のパフォーマンスアップとEV航続距離が向上(約~)された。
ちなみにフロントモーター(52kW/165Nm)、リアモーター(107kW/307Nm)は改良型PHEVの全モデルで共通だが、搭載する2L直列4気筒ターボエンジンは「T8」のシリーズが317ps/400Nm、「T6」のシリーズは253ps/350Nmと仕様が異なる。
ただし同じリチャージ プラグインハイブリッドでも、コンパクトSUVの「XC40」のみキャラクターが異なり、システムそのものの構成が大きく違っている。