「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、ポルシェ 911ターボSだ。

やはり、ポルシェ ターボは他のスーパーカーとは違う

ダッシュボード上にはストップウオッチも備わり、自分に挑戦し続ける熱いユーザーの心も盛り立ててくれるという、遊び心も加えられている。デジタルとアナログを兼ね備えたメーターになっているということは、サーキットで使えるほど精度も高いのだろうし、実際に使う場所になかなか出会うことはなくても、なんとなく雰囲気が出てインテリア的にカッコよくてイイ。

画像: スペシャルカラーのブラウンに包まれたインテリア。カーナビも標準装備。ハンドル位置は右も選べるが、ミッションは7速PDKのみ。

スペシャルカラーのブラウンに包まれたインテリア。カーナビも標準装備。ハンドル位置は右も選べるが、ミッションは7速PDKのみ。

しかし、そういったギミックを盛り込んだとしても、日本の交通事情においては、ボディ剛性にしろパフォーマンスにしろ、すべてにおいて余裕がありすぎて、体感的に速い!と感じるレベルまでには至らない。前述したように、外から走る姿を見ても速く感じないのは、高速で走る姿をイメージしてデザインされているがために、まだその領域に達していないということなのかもしれない。

思えばポルシェ911は、スーパーカーブーム時代の初代(930)ターボからして、佇まい的にはちょっと地味な存在だった。しかし、性能的な安定感や安心感でいったら、そのころも、そして今も(編集部註:2011年当時)スーパーカー群の中では、頭ひとつポルシェが抜きん出ているのは間違いない。やっぱり完成度が違うのだ。完成度を突き詰めていくと、色気は失われがちだが、それを余裕という言葉に置き換え、色気は残しつつも、スーパーカーとは思えないほどラクに普段使いできるという懐の深さが、ポルシェらしさなのかもしれない。

それは、ボディの大きさにも感じられる。コンパクトで軽量なのは、速く走るためのものだということは分かっているが、全長4450×全幅1850×全高1300mmの体躯は、ちょっと大きめの立体駐車場ならどこでも入る。小回りもかなり利くから、狭い街中の路地やUターンなんていうシーンでも、あまり苦にならない。

その上、このサイズとレイアウトの割には、荷物も意外と積める。まず後席の背もたれを倒せば、かなりのものが入る上、フロントのラゲッジスペースは、リモアのサルサトローリーと大きめのトートバックが2個、楽勝で入るくらい広い。いちばん身近で実用性の高いスーパーカー。「能ある鷹は爪を隠す」、まさにそれがポルシェ 911ターボのすごさなんだなと、改めて思わされたのだった。

画像: タイヤは前後異サイズのBSポテンザRE050A。ブレーキはセラミックコンポジット。ハイパワーに対応するストッピングパワーもさすが。

タイヤは前後異サイズのBSポテンザRE050A。ブレーキはセラミックコンポジット。ハイパワーに対応するストッピングパワーもさすが。

■ポルシェ 911ターボS 主要諸元

●全長×全幅×全高:4450×1850×1300mm
●ホイールベース:2350mm
●車両重量:1590kg
●エンジン:水平対向6 DOHCツインターボ
●総排気量:3799cc
●最高出力:390kW(530ps)/6250-6750rpm
●最大トルク:700Nm(71.4kgm)/2100-4250rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:リア縦置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・67L
●EU総合燃費:8.8km/L
●タイヤサイズ:前235/35ZR19、後305/30ZR19
●当時の車両価格(税込):2209万円

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