強靭な中にしなやかさを残した絶妙な「猫足」
そういうクルマだから、シャシは基本的にはものすごく引き締まっている。走行モードをコンフォートに切り替えれば可変ダンパーが和らげてくれるかも知れないが、スポーツに入れたら家族から苦情が出ること必至。プジョーの市販車史上、もっともハードだ。
当初は「こりゃ猫足とは呼べない」と思わされたものだが、次第にプジョーらしさがちゃんとあることがわかってくる。ガチンと跳ね返す頑固なハードさではなく、強靱さの中にしなやかさが感じられる受け止め方をしてるのだ。ほかのプジョーと同様に路面をしっかと掴んでる感覚も、常に濃厚にある。
コーナリングスピードは通常の508よりも段違いに速い。後で写真を見たら体感以上にロールをしていたが、だからこそ傾くにつれて車体をリアからコーナリングラインに据えていくようなプジョー特有の曲がり方を見せるのだ。そして後輪のモーターによる押し出しが、さらにその感覚を強めている。そんなフィーリングだ。
こうした味のはっきりした楽しいスポーツセダンは日本には少ないわけで、だからこそ刺さる人には深く刺さるはず。でも、少ないには少ない理由もあるわけで。何だかとても複雑な気分である。(文:嶋田智之)
プジョー 508 プジョースポールエンジニアード 主要諸元
●全長×全幅×全高:4750×1859×1420mm
●ホイールベース:2793mm
●エンジン:直4DOHCターボ+2モーター
●総排気量:1598cc
●最高出力:147kW(200ps)/6000rpm
●最大トルク:300Nm/3000rpm
●モーター最高出力:前81kW(110ps)、後83kW(113ps)
●モーター最大トルク:前320Nm、後166Nm
●システム総合出力:265kW(360ps)
●システム総合トルク:520Nm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料:プレミアム・43L
●WLTPモード燃費:49.2km/L
●タイヤサイズ:245/35R20