三菱自動車(以下、三菱)の新型 軽EV「eKクロスEV」の販売が好調なようだ。そこで、三菱の軽EVの過去〜現在〜未来の経緯について、商品戦略本部 CPSチーム 商品企画 担当マネージャーの今本裕一氏に話を伺った。

i-MiEVがあったから、eKクロスEVが生まれた

2022年5月20日に発表(発売開始は6月16日)されたeKクロスEVは、7月5日の時点で4609台を受注しているという。月販売目標台数は850台だから、約1カ月半で目標の3.5倍以上の受注を受けていることになる。姉妹車の日産 サクラは7月3日の時点で1万8000台に達しているが、これは販売店数などの差もあるから、いささか仕方のないところ。

ちなみに、7月3日時点で、上級グレードのPとGとの受注比率は54:46。初期受注は上級グレードのほうが売れる傾向にあるが、それでも最近はGの受注が増えつつあるようだ。主要メーカーオプションでは、やはり先進安全快適パッケージの装着率が高い。ボディカラーでは、ナチュラルアイボリーメタリック、ホワイトパール/ブラックマイカ、ミストブルーパールがトップ3を占めている。

画像: 2009年、リチウムイオン電池を用いた世界初の量産電気自動車、i-MiEV。登場するのが少し早すぎたのだろうか・・・。

2009年、リチウムイオン電池を用いた世界初の量産電気自動車、i-MiEV。登場するのが少し早すぎたのだろうか・・・。

さて、いまから13年前の2009年に三菱はリチウムイオン電池を用いた世界初の量産電気自動車(EV)として「i-MiEV(アイミーブ)」を発売した。ユニークなスタイリングのRR軽乗用車「i(アイ)」をベースとしたi-MiEVは法人を中心に個人にも販売され、注目を集めたが、残念ながら商業的には成功とはいえなかった。

車両価格(それでも年々、引き下げられてはいたのだが)、航続距離、充電インフラ、法規対応のためのサイズアップ、そして社内の問題などの諸事情はあったものの、i-MiEVは2021年まで生産されるロングセラーとはなったが、日米欧(プジョー/シトロエンにはOEM供給された)で販売台数は2万3000台ほどにとどまった。

「でも、i-MiEVがあったから、いまのeKクロスEVが生まれたんです。衝突対応やシステムの制御など、軽のEVならこうなるといったフィードバックが活かされているんです」(今本氏)

画像: 軽自動車の自主規制値である64psの最高出力と195Nmの最大トルクを発生するモーターで前輪を駆動する。

軽自動車の自主規制値である64psの最高出力と195Nmの最大トルクを発生するモーターで前輪を駆動する。

2011年に設立された、三菱と日産による軽自動車製造の合弁会社、NMKVでは「実用性のあるEVを軽自動車で」と開発が進められた。WLTCモードでの一充電走行可能距離は180kmくらいが目標。実質的には100kmプラスアルファがあれば、軽自動車の日常使いには十分という数値だ。そのため、2019年3月に発表された三菱 eKワゴン/eKクロス、および日産 デイズのプラットフォームは、EV化に対応できるよう設計されていた。つまり、eKクロスEV(とサクラ)は、あとからEVが開発されたのではなく、eKクロスなどと同時に開発されていたわけだ。

エンジン車のeKクロスなどに試乗したとき、「軽自動車としてはけっこう剛性を高めているな」と感じられたのは、この伏線だったのだ。EV化にあたってのバッテリーや補機類などは、エンジン車の4WDでフロアトンネルなどにあたる部分にレイアウトされている。したがって、eKクロスEVのラゲッジスペースはeKクロスの4WDと変わらない容量があり、キャビンのフロアもほとんど変わらない高さで、エンジン車から乗り換えても違和感がない。

「i-MiEVからのフィードバックがあったといっても、こちら(eKクロスEV)はFFですし、日産さんのリーフからのフィードバックも大きいです。駆動用モーターは三菱製ですが、システム制御や充電などのマネージメントは、日産さんの技術が活かされています」(今本氏)。

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