16代目クラウンの誕生を機に、あらためて各世代のカリスマ性を彩ってきた「はじめて」を紐解く特別連載企画。第2回は、1962年に誕生した第2世代「RS4#/MS4#型」をご紹介しよう。日本初のオールアルミV8エンジンも設定されるなど、高級車としてのポジションを高め始めたモデルである。(Motor Magazine Mook 「TOYOTA CROWN 13th」より)

VG10型──日本初のV型8気筒エンジンを搭載、真のVIPサルーンへ

画像: 64年式-クラウン・エイト(トヨタ博物館所蔵) クラウン・エイトは、国産乗用車の最高峰として、1964年に誕生した。エンジンは歩い合金製の軽量コンパクトなV8ユニット(2599cc)。最高出力は115psを発揮していた。

64年式-クラウン・エイト(トヨタ博物館所蔵) クラウン・エイトは、国産乗用車の最高峰として、1964年に誕生した。エンジンは歩い合金製の軽量コンパクトなV8ユニット(2599cc)。最高出力は115psを発揮していた。

64年4月には日本初のV型8気筒エンジンを積むVIPサルーン、クラウン・エイト(VG10型)を投入する。ホイールベースを延ばし、トレッドを拡大してエグゼクティブ色を高めた。純毛のカーペットや高価な西陣織のパワーシートなど、内装も贅の限りを尽くしている。

クラウン・エイトは、基本的に今まで経験のないV8エンジンを採用し、その結果、ボディ、足回りともクラウン・デラックスを母胎にホイールベースでプラス50mm、トレッドをプラス160mmも拡大してバランスの取れた大型化が試みられた。

エイトを見て感じることは、真横からよりもむしろ正面から見た大きさである。すなわち、全長ではわずか110mmの延長に対し、全幅では150mmも大きく、1460mmの車高はクラウンと変わっていない。いっそう豪華に見える大きさになった。

さらにクラウン・エイトには、トヨタ自動車の技術陣が積極的に開発した新しい技術が数えきれないほど盛り込まれている。

画像: ブロック/ヘッド共にアルミ軽合金製を採用し軽量コンパクトな、トヨタ初のV型8気筒OHVエンジン。115ps、単体重量152kgなのでパワーウエイト値は1.32kg/psと4気筒系のR型の1.95より軽量パワフルだった。

ブロック/ヘッド共にアルミ軽合金製を採用し軽量コンパクトな、トヨタ初のV型8気筒OHVエンジン。115ps、単体重量152kgなのでパワーウエイト値は1.32kg/psと4気筒系のR型の1.95より軽量パワフルだった。

まず、V型とネーミングされたエンジンは、ボア×ストローク=78×68mmというオーバースクェア・タイプで、総排気量は2599cc。バルブ形式はハイドリック式ラッシュアジャスター(いわゆるオイル・タペット)を組み合わすOHV式だ。カム・シャフトの駆動はサイレント・チェーンを採用する。ギア駆動のような騒音も解消される。

90度バンクのシリンダーは、軽量なシリコンとマグネシウムを含むアルミ合金製で熱膨張が少なく剛性が高い特徴を持つ。スチール・ライナーを内蔵する。シリンダーヘッドもブロック同様アルミ合金製だが、鋳造法はセミパーマネント・モールド法で製造される。クランクシャフトの支持は5ベアリングで、メタル材質は鉛ベースのホワイト・メタルを採用。

燃料供給は、日本電装が閲発したトランジスタ式電磁ポンプとオートチョーク付きの2バレルキャブレターを採用する。2バレル式といっても、2つのシングル・キャブを合わせたもので、両バレルとも、それぞれあらゆるエンジン状態の要求に応じられるようになっている。インテーク・マニホールドは、アルミ合金製で、エンジン冷却水により暖められ、良好な混合気を得るようになっている。

このアルミ合金を多用したV型エンジンの乾燥重量は152kgと発表されている。数値的には、1900ccの3R型エンジンより軽量なのである。なお、1965年7月のマイナーチェンジで、4速フロア・シフト仕様のVG10-A型と3速オーバードライブ付きコラムシフト仕様のVG10-C型もラインアップに加えられた。

■クラウン・エイト 主要諸元

●全長×全幅×全高:4720×1845×1460mm
●ホイールベース:2740mm
●車両重量:1380kg
●エンジン:V8 OHV
●総排気量:2599cc
●最高出力:115ps/5000rpm
●最大トルク:20.0kgm/3000rpm
●トランスミッション:コラム4速MT
●駆動方式:FR
●当時の車両価格(税込):165.0万円

オマケ情報──第2世代クラウンが「走った」時代

画像: 当時流行った横バー式のスピードメーター。コラム式レバーが高級とされていた時代でもあった。

当時流行った横バー式のスピードメーター。コラム式レバーが高級とされていた時代でもあった。

画像: 63年式-RS41型(トヨタ博物館所蔵) まるでソファのような前列シート。

63年式-RS41型(トヨタ博物館所蔵) まるでソファのような前列シート。

画像: 63年式-RS41型(トヨタ博物館所蔵) 設えそのものは前列とほとんど変わらない後席。インテリアでもワイド感を強くアピール。

63年式-RS41型(トヨタ博物館所蔵) 設えそのものは前列とほとんど変わらない後席。インテリアでもワイド感を強くアピール。

■1962年(昭和37年)の出来事

・東京都が世界初の1000万人都市に。北陸本線・北陸トンネル(1万3869m)完成
・堀江謙-、ヨットで太平洋単独横断に成功
・戦後初の国産飛行機・YS11、初飛行
・米、キューバの海上封鎖を声明
・英国リバプールにてビートルズ結成
・植木等主演映画『ニッポン無責任時代』公開
・ファイティング原田がフライ級世界チャンプ
・鈴鹿サーキット完成。若戸大橋開通
・全日本自動車モーターショー入場者数百万人
・9月クラウンをモデルチェンジ(RS40型)

■1963年(昭和38年)の出来事

・初の日米テレビ中継でケネディ大統領暗殺
・着工から7年。黒部第四ダム完成
・『鉄腕アトム』『鉄人28号』『8マン』放映
・門司、八幡、小倉など5市が合併、北九州市発足
・坂本九『上を向いて歩こう』が米で100万枚突破
・『こんにちは赤ちゃん』『高校三年生』がヒット
・吉展ちゃん誘拐事件発生
・力道山刺殺
・名神高速道路一部開通
・大阪駅前に横断歩道
・第1回日本グランプリ自動車レース開催
・年間新車登録台数が100万台突破

■1964年(昭和39年)の出来事

・第18回オリンピック、東京で開催
・東京モノレール、東海道新幹線開業
・海外観光旅行自由化。団体観光ツアーがハワイヘ
・新潟地震発生。山陰・北陸地方に豪雨
・巨人・王貞治、ホームラン55本の日本新記録
・北ベトナムが米駆逐鑑を攻撃(トンキン湾事件)
・米原子力潜水艦・シードラゴンが佐世保港入港
・ローリング・ストーンズ、デビュー
・『平凡パンチ』創刊。VANがブーム
・首都高1号・4号線開通
・ホンダ、8月のドイツGPでF1に初参戦。

■1965年(昭和40年)の出来事

・米軍、北米開始
・ベ平連、初主催のデモ・東京教育大教授・富永三郎、教科書検定訴訟
・日韓基本条約調印。中国で文化大革命始まる
・プロ野球第1回ドラフト会議。堀内-巨人など
・日本航空、ジャルパック発売。シンザン5冠
・朝永振一郎、ノーベル物理学賞受賞
・美空ひばり「柔」で日本レコード大賞受賞
・名神高速道路全線開通。第三京浜開通
・トヨタ・スポーツ800発表(3月)

■1966年(昭和41年)の出来事

・ビートルズ来日。3日間で5回公演。前座はドリフ!
・日本の人口が1億人を突破
・丙午で出産数激減
・共和製糖不正融資・黒い露事件が明るみに
・五木寛之「青ざめた馬を見よ」が直木賞受賞
・『おはなはん』『ウルトラマン』放送開始
・『おそ松くん』『ハリスの風』魔法使いサリー』放映
・BOA機の空中分解など、航空機事故、相次ぐ
・国立劇場開場。日産とプリンスが合併
・日産自動車に
・トヨタ・カローラ(KE10型)発表

編集部註:掲載本文は1963年~1966年のモーターマガジン誌から抜粋しています。技術的表現などは、当時の表記を優先しています。画像の一部(トヨタ博物館所蔵の2台)は、写真:早川俊昭。

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