2009年9月、フランクフルトモーターショーでBMW Xモデルの末弟として初代X1がデビューしている。日本上陸は2010年4月まで待たなければならなかったが、Motor Magazine誌は2009年秋にドイツ・ライプチヒで行われた欧州市場向け試乗会に特別参加、いち早く試乗レポートを掲載している。今回はこの時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年12月号より)

全幅が1.8mを切るのは日本市場にとって大歓迎

停滞した自動車市場を活性化するのは、政府の補助金や値引きではない。こうした手段は単なる痛み止め、あるいはカンフル剤であって、効果的な治療法ではない。

この病気を根本的に治療するのは魅力あるモデルを送り込んで、消費者のサイフの紐を緩めることなのである。当たり前のように思われるが、某国のメーカーたちは政府からのインセンティブに小躍りし、計画中のニューモデルの数を減らしたりしている。

画像: 3シリーズツーリングのプラットフォームを利用したX1だが、全長は70mm短く、全幅は20mm狭い。そのぶん取り回しはしやすいわけだ。

3シリーズツーリングのプラットフォームを利用したX1だが、全長は70mm短く、全幅は20mm狭い。そのぶん取り回しはしやすいわけだ。

もちろん、ドイツでも廃車奨励金が大歓迎されているが、それは小型車や廉価モデルに限ってのことで、とくにプレミアムブランドは恩恵をほとんど受けていない。

こうした状況下で、BMWは今年に入ってからX5、X6のMモデル、7シリーズのxDrive、そして5シリーズGTと積極的にニューモデル展開を行っている。そして今回、これらのニューモデルに加えて10月から欧州で発売開始するコンパクトSUVがX1で、その試乗会がこのモデルを生産する旧東ドイツのライプチヒ工場を起点に開催された。

今回の試乗会は欧州各国のメディア向けなので、残念ながら日本での販売が予定されているガソリン仕様が用意されておらず、ディーゼルエンジンのxDrive20dをテストに駆り出した。ちなみにこの2Lと1.8Lディーゼル仕様には後輪駆動のsDriveも用意されている。

車体色のメタリックブラウンは、今年から各ドイツメーカーがホワイトに代えてキャンペーンに使うことが多い流行色である。この色によって、コンパクトSUVのX1には確かに新鮮さが感じられる。

全長×全幅×全高は4454×1798×1545mmで、ライバルと目されるフォルクスワーゲン・ティグアンとほぼ同じ、メルセデス・ベンツGLKよりはひと回り小さい。とくに幅が1.8mを下回っているのは、日本市場にとっては大歓迎だろう。

フロントまわりは異型ヘッドライトユニットや、やや大型化されたキドニーグリルなど、7シリーズや5シリーズGTの流れを汲む最新のBMWデザインである。またテールエンドは伝統のL字型を継承しながら新しいデザインが与えられている。

インテリアも5シリーズGTを彷彿とさせるすっきりした曲面で構成されており、同時に使用素材も安っぽくなく好感が持てる。またリアキャビンは3シリーズツーリングより27mm高いおかげで頭上にはとくに余裕がある。また40/20/40の割合で3分割できるリアシートをすべてフラットに倒すと、420Lのトランクは1350Lへと拡大する。

タウンユースは非常に快適、オフロードの走破性も高い

最高出力177psを発生する2Lターボディーゼルは、空車重量1650kgの5ドアボディをスタートから100km/hまで6速MTで8.4秒、6速ATでは8.6秒でカバーする。そして最高速は共に205km/hと発表されている。

画像: インパネまわりは他のXシリーズと同様のテイストを持つ。ディスプレイやメーターの視認性、スイッチ類の操作性はよい。

インパネまわりは他のXシリーズと同様のテイストを持つ。ディスプレイやメーターの視認性、スイッチ類の操作性はよい。

テスト車は6速ATだったがスタートダッシュは思った以上に鋭く、わずかなショックでシフトアップを続けていく。タウンユースを重視したこともあって40km/hくらいの速度で街中を通り抜ける際の乗り心地は、ランフラットタイヤの採用にもかかわらずX3よりはゴツゴツせずずっと快適である。

もちろんBMWの持つ走りのDNAはアウトバーンでの130km/hを超えてからの高速走行でいかんなく発揮された。やや人工的な重い感じが残るステアリングホイールだが、ゲインは明確で路面からのインフォメーションもきっちり伝わってくる。

と、ここまでの報告ではX1はソフトなSUVかと思われるかもしれない。しかしX1に搭載されている電子制御の多板クラッチを持つ4WDシステムは伊達ではない。

この日のテストのために元鉱山であった場所に巨大な特設オフロードコースが用意されていたが、ここで最低地上高194mm、アプローチアングル18度、そしてディパーチャーアングル22.2度のX1は、まさに水を得た魚のようにデコボコの道なき道へ向かって突進していった。形がややソフトなだけにちょっと心配したが、前述の数値が示すように、そのオフロード性能はビッグブラザーのX3やX5に勝るとも劣らない。

最後に驚いたのはこのX1の価格である。試乗したxDrive20dは3万2400ユーロ(約438万円)で、ほぼ同じ仕様の320d xDriveツーリングよりも2000ユーロ(約27万円)も安いのである。これはルーフの高さや、リアシートのフレキシブル性など使い勝手を考えると、大バーゲン価格と言える。

日本への上陸は夏頃と言われているが、来年の注目モデルの1台になるのは間違いない。それだけの新しさと魅力を備えている。(文:木村好宏/写真:Kimura Office)

BMW X1 xDrive 20d 主要諸元

●全長×全幅×全高:4454×1798×1545mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1650kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1995cc
●最高出力:130kW(177ps)/4000rpm
●最大トルク:350Nm/1750-3000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●EU総合燃費:16.1km/L
●タイヤサイズ:225/50R17
●最高速:205km/h
●0→100km/h加速:8.4秒
※EU準拠

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