メルセデス・ベンツ日本は2022年7月に電気自動車第3弾の「EQB」を発売した。世界でも日本でもEVシフトを進めるメルセデス・ベンツの戦略と、それに伴う今後の展開を探ってみた。(タイトル画像は、メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎 社長とメルセデス・ベンツ EQB)

メルセデス・ベンツは再び「量より質」を目指していくのか?

1990年代後半、世界の自動車メーカーは合従連衡を始め、年間生産台数を増大して、いわゆる「400万台クラブ」への仲間入りを目指した。メルセデス・ベンツも例外ではなく、アメリカのビッグ3のひとつであったクライスラーを1998年に買収して「ダイムラー・クライスラー」となった。紆余曲折の末、この関係は2007年に終了したのだが。

画像: 4世代目となる現行型Aクラス。日本では人気だが、これが最終モデルとなるのか?

4世代目となる現行型Aクラス。日本では人気だが、これが最終モデルとなるのか?

それまではDセグメント以上の乗用車しか生産してこなかったメルセデス・ベンツは、FFコンパクトカーのAクラスを登場させ、現在の4世代めではプラットフォームを共有するFFベースのコンパクトモデルは、Aクラス(ハッチバック/セダン)、Bクラス、CLA(セダン/シューティングブレーク)、GLA、そしてGLBと7車種で展開している。

日本市場でも、初めて購入するメルセデスとして最適なAクラス ファミリーのモデルは今も人気を集めている。2021年の販売台数では、Aクラス(ハッチバック/セダン)が5990台で10位、GLBが5812台で11位、CLA(セダン/シューティングブレーク)が5072台で15位、GLAが4067台で20位と、トップ20にランクインしている。

だが、ドイツの経済誌によればメルセデス・ベンツはAクラスとBクラスを2025年には生産終了するらしい。AクラスとBクラスは、現行型が最終モデルとなるようだ。ただし次世代モデルでもGLAやGLBといったSUVは人気があるため継続生産される。要するに、エントリーモデルとしてメルセデス・ベンツの間口を広げることには成功したが、収益性の低いモデルゆえ役目を終え、今後は収益性の高いモデルにシフトしていくようだ。

それを示すかのように、2022年5月にメルセデス・ベンツは超高級車ブランド「ミトス(MYTHOS)」を立ち上げると発表した。メルセデス・ベンツには既に「メルセデス・マイバッハ」という高級車のサブブランドがあるが、これの上をいくモデルになるという。おそらくは、フェラーリの限定モデル シリーズ「イコーナ」のような、ワンオフに近い超高級コレクターズアイテムとなるモデルを生産するのだろう。

画像: 本国で受注が開始されたメルセデスAMG SL。これをベースに、ミトス ブランドの第1号車が生まれるようだ。

本国で受注が開始されたメルセデスAMG SL。これをベースに、ミトス ブランドの第1号車が生まれるようだ。

ちなみに、かつてピニンファリーナがフェラーリ テスタロッサをベースに同名の「ミトス」というスーパー カスタマイズドカーを発表したが、名称的には問題はなかったのだろうか。それはともかく、あちこちのサイトに登場するスクープ画像などから推察すると、ミトス ブランド最初のモデルは、メルセデスAMG SLをベースにしたものになりそうだ。

2039年のカーボンニュートラルの実現に向けてEV化を加速させる一方、再び高級化路線へとウエイトをシフトしたメルセデス・ベンツ。そして最終的には、ミトスもEV化されるに違いない。これから展開されるであろうメルセデス・ベンツの「量より質」への転換は、ジャーマンスリーの他2ブランドをはじめ、多くのプレミアムブランドにも影響を与えることだろう。まずは、日本市場での動きを注視しておきたい。

This article is a sponsored article by
''.