2022年冬に世界初のEV専売拠点を日本に開設予定
2019年5月、メルセデス・ベンツの母体であるダイムラーは、2039年から販売する乗用車は二酸化炭素(CO2)の排出量をゼロにする「カーボン ニュートラル」にするという戦略「アンビション 2039」を発表した。EV(電気自動車)専用のサブブランド「メルセデス EQ」を立ち上げ、これ以降、メルセデス・ベンツのEV戦略は加速していく。
日本市場においても、メルセデス・ベンツ日本(以下、MBJ)は2019年7月にEQC、2021年4月にEQAを発売。EVの販売台数は、2021年は対前年比で4倍となり、2022年上半期も堅調だという。
今回、第3弾として発売された「EQB」は、先に導入された2台同様のSUVタイプのEVだが、注目点は3列シートの7人乗りを採用したこと。現在、日本で手に入るEVで3列シートを設定しているのはテスラのモデルXくらい(モデルSにはオプション設定されるが子ども用)だ。しかもモデルXは全長が5m以上あり、日本の街中では少々持て余すサイズだ。
EQBの全長は4.7mを切る適度なサイズで、ミニバン的にも使えるクロスオーバーSUVタイプのEVとなれば、ポスト ミニバンでEVを検討しているオーナー予備軍には格好のモデルとなりそうだ。航続距離も十分にあり、MBJが「新しいコンセプトの電気自動車」と謳う効果は、かなり期待できるかもしれない。
さらに、2022年内にはEV専用プラットフォームを採用したセダンタイプのEV、「EQS」と「EQE」も日本に導入される。しかも、世界初のEV専売拠点を2022年冬に開設予定だ。現時点では具体的な場所は公表されていないが、「販売実績を考えると首都圏のどこかになるでしょう(上野 MBJ社長)」とのことで、日本市場でもEV戦略は加速していくことは間違いない。
とはいえ、日本のEVは自動車市場において、まだ1%にすぎない。だがじつは、その4割ほどは輸入車が占めている。ほとんどの日本メーカーがEVをラインナップし、最近では軽自動車EVも登場し、補助金などを考慮すれば購入しやすくはなっているとはいうものの、EVはまだまだ高額商品。輸入車ではエンジン車との価格差が少なく、ラインナップも豊富という点もあるのだろう。
欧米よりはEVの普及率が低い日本だが、ブレークする時期は来るのだろうか。「ケチャップのボトルを振ってもなかなか中身は出ませんが、あるときバッと出てくる。これをケチャップボトル エフェクトと言うんですが、インフラの問題とかが調整できれば、ある日ケチャップが出るようにドバッといくのではと思います(上野社長)」
先日、世界第2位のEVメーカーである中国のBYDが日本参入を発表したが、2023年初めに発売されるBYDのEVの価格設定や販売戦略次第では、日本のEV市場にもケチャップがドバッと出るのかもしれない。これに対し、メルセデス・ベンツをはじめとするプレミアムブランドのEVは、どんな戦略を見せるのか。また、日本メーカーも、どう対抗していくのか。2023年は、日本のEV市場の大きな転換期になりそうだ。