駆動用バッテリー容量を9.9kWhから13.0kWhにアップ
従来型パサートではセダンにもGTEが設定されていたが、新型パサートGTEはヴァリアントのみが導入される。また、22年中に日本で供給される台数はわずか50台ほどと見込まれており、その台数を越えた受注分については23年以降の出荷予定とアナウンスされている。これも、半導体供給不足の影響によるものだという。
さて、新型GTEが大きく進化したのは、駆動用リチウムイオン電池の容量が従来の9.9kWhから13.0kWhに増強され、EV航続距離(WLTPモード)が57kmとなった点だ。従来型のEV航続距離はJC08モードで最長51.7kmだったが、これを新型と同じモードに換算すると43.5kmとなる。バッテリー容量が増強された分(約1.3倍)、同じ割合でEV航続距離も伸びているのだ。
1.4L直4ターボエンジンとモーターの最高出力/最大トルクなどの仕様は従来型と同じで、GTE専用の6速DCTも同様だ。6速DCTと電気モーターは同一ハウジング内に収められており、さらにこのユニットにはエンジン遮断用のクラッチシステムが含まれている。
つまり、DCT部を含めると3組のクラッチシステムが備わるわけだ。この遮断クラッチは、アクセルペダルをオフした時などに駆動系からエンジンを切り離して、積極的にエンジン停止を行うためのもので、もちろん燃費を向上させることが目的だ。
トップモデルたる心地よさ。秀逸なパフォーマンスも魅力
試乗すると、低回転域からとても力強い印象だ。新型パサートシリーズには1.4L直4ターボエンジンと2L直4ディーゼルターボエンジンという2種類のパワーユニットが用意されているが、GTEはその両方の良いところ取りをした上で、より厚みあるパフォーマンスを示してくれる。スムーズさと驚くべき力強さ、そしてEV走行時の抜群の静粛性である。
とくにパフォーマンスを最大限に発揮するGTEモードを選ぶと、バッテリー容量の拡大により電気モーターのアシスト(エレクトリカルブースト、と表示)が従来型よりもさらに積極的に行われている印象も受けた。どの領域で走行していても、必要十分な力強さをすぐに発揮して、まさに「電動化版GTI」という表現がふさわしい走りっぷりを味わえた。
もちろん、これには試乗車がドライビングプロファイル付きDCC(アダプティブシャシーコントロール)や電子制御式ディファレンシャルロックのXDSを備え、18インチタイヤを装着する「アドバンス」仕様だったということも含めなくてはいけないが、それでも乗り心地は十分に快適だった。
ラゲッジルーム容量は通常ヴァリアントの650Lに対して483Lとそれなりに小さくなる。ただ奥行きは確保されているので、その使い勝手は思うよりも高い。
現行型ラインナップでは、2Lディーゼルターボエンジンと4WDを組み合わせるオールトラックがベストモデルだという認識は変わらないが、GTEヴァリアントが現代的な別の魅力を備えているということは十分に実感できた。(文:Motor Magazine編集部 香高和仁/写真:井上雅行)
■フォルクスワーゲン パサート GTE ヴァリアント アドバンス主要諸元
●全長×全幅×全高:4785×1830×1510mm
●ホイールベース:2790mm
●車両重量:1770kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1394cc
●最高出力:115kW(158ps)/5000-6000rpm
●最大トルク:250Nm/1550-3500rpm
●モーター最高出力:85kW(116ps)
●モーター最大トルク:330Nm
●トランスミッション:6速DCT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・50L
●WLTCモード燃費:15.9km/L
●タイヤサイズ:235/45R18
●車両価格(税込):683万8000円
フォルクスワーゲンの最新動向:22年中にID.4とゴルフRが日本でデビュー
エンジン車のトップパフォーマンスモデルと最新BEVが揃い踏み
2022年1月の年頭会見においてフォルクスワーゲンジャパンは「年内にBEVのID.4を日本へ導入予定」と発表した。欧州マーケットでの電動化推進ムーブメントとは対照的に、日本市場ではラインナップの充実が予定より遅れているように感じられるのも事実だが、まずはCセグメントSUVサイズ相当のID.4からデビューが始まる。またゴルフシリーズのトップモデルである「R」がハッチバックとヴァリアントで登場の予定。こちらも楽しみだ。