わずか3年9カ月でのフルモデルチェンジ。背景にあったものとは・・・
Lクラス首位の座を奪い取られて危機感を抱いたトヨタは、予定を繰り上げてクラウンのフルモデルチェンジを断行する。5代目のMS80系とMS90系がベールを脱ぐのは、74年10月のことだ。
ワイドバリエーションを誇り、新たに4ドアビラードHTを設定した。安全性を考慮してセンターピラーを残し、サッシュレスのドアを組み合わせている。
スタイリングは4代目の失敗に懲りてかオーソドックスなデザインに改められた。3サイズは4690×1690×1440mmで、ホイールベース2690mm(2000・4ドア・スーパーサルーン)で、旧モデルに較べると全長が10mm、全幅20mm拡大されている。ボディのサイズ・アップのうち居住性にプラスしているのは全幅の拡大のみで、全長の延長はその90%までが、エンジンルームの拡大に消化されている。
スタイリングはストレート主体のボクシーなフォルムで、HT系はエレガントな角型ヘッドランプとホップアップしたコークボトルラインが特徴だ。2ドアHTはドア後方のCピラーにオペラ・ウインドーがつく。
シャシ関係での注目点は、トップ・グレードのロイヤルサルーンに4輪ディスク・ブレーキの採用、5人乗りハードトップ系スーパーサルーン以上のグレードのフロント・ブレーキに4ポッド式ベンチレーテッド・ディスクと、速度によって適切な操舵力が得られる新設計の速度感応型パワーステアリングの採用などがある。
直6ユニットの進化は、排出ガス規制との「闘い」でもあった
5代目クラウンが登場したのは排出ガス規制がグッと厳しくなった時期だ。ペリメーターフレームのユニット・ボディは、予定される排気ガス規制に対応するべく、フロア形状の変更、フレームのフロント・サイドレール間隔が拡大されている。さらに排ガス対策に奔走し、エンジンを絞り込んでいる。
直列6気筒は2LのM型エンジンと2.6Lの4M型を用意している。75年からは排出ガス対策に本腰を入れ、5月にトヨタ触媒方式のTTC・Cで50年排出ガス規制を乗り切った。翌76年6月には51年排出ガス規制をクリア。
77年6月には、排気系に三元触媒方式による53年規制適合のM-EU型エンジンが発表された。以後、この三元触媒とEFI(電子制御燃料噴射装置)システムが、排気規制クリアの本命システムとなる。
さらに77年11月にはディーゼルエンジン搭載車も加わった。4M-EU型エンジンが53年排出ガス規制を乗り切ったのは78年2月だ。140ps/21.5kgmと、51年規制適合車(
安全対策としては、ESC(電子制御式スキッドコントロール)の改良、連続ウェビング・タイプのシートベルト(スーパーデラックス以上はオートロック・リトラクター)、ロイヤルサルーンに6点ウォーニングの附いたOKモニターを採用している。
第5世代クラウンは順調に販売台数を伸ばし、74年12月には1万台を超える販売記録を達成する。
■トヨタ・クラウン2ドアHT 2600スーパーサルーン(78年式・53年規制適合車) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4740×1690×1415mm●ホイールベース:2690mm●車両重量:1415kg●エンジン:直6SOHC●総排気量:2563cc●最高出力:140ps/5400rpm●最大トルク:21.5gm/3800rpm●トランスミッション:4速AT+オーバードライブ●駆動方式:FR●当時の車両価格(税込):202.0万円