RRからミッドシップになった2代目A110がさらに進化
アルピーヌA110の初代は1963年から1977年まで生産され、50年前のフランス代表のライトウエイトスポーツカーの1台だった。あれから40年、2017年に2世代目のアルピーヌA110が誕生した。
初代は縦置きエンジンのRRだった。2世代目はリアアクスルより少しだけ前にマウントされたミッドシップレイアウトになった。このレイアウトにする理由は前後の重量バランスを44:56にできること、重心点を低くできること、それに後部床面を持ち上げることで空力的なディフューザー効果を得られるなどの多くのメリットがあるためだ。
改良版A110Sは最高のオンザレールが楽しめる
今回試乗したのはラインナップ見直しで誕生したA110Sである。ノーマルと比べてサスペンションのセッティングが変わり、スプリングは硬めに、前後スタビライザーの剛性も高めてあり、タイヤサイズも大きくなっている。これらによりロールレートは3.3度/Gから2.8度/Gに小さくなっている。
この走りはワインディングロードやサーキットで際立つ。足は硬めでアクセルペダル、ブレーキペダル、ハンドルの操作に対しダイレクトに動いてくれる。ボディ剛性が高く、シート周りの剛性も高いことがハンドリング性能を引き上げている。
ハンドル操作に対しても剛性の高さを感じる。回した時の軸のブレのなさというか、ガッチリ支えられたシャフトを回している感じがメルセデス・ベンツを思い出させる。だからコーナー進入時のブレーキング、ターンイン、コーナリング、コーナー出口でハンドルを戻すところまで余計な操作をしなくても済むのだ。ライトウエイトスポーツのお手本とも言える。
A110Sの車重は1110kgだからマツダ ロードスターよりちょっと重いだけでこんなに剛性感が出るのはちょっと驚きだ。
後輪荷重が重い分だけアクセルを踏んでいった時のリアタイヤのグリップに余裕があるのがわかる。なかなかグリップ限界には達しない。それが安定感につながっているから安心してコーナリングを楽しめる。かといってアンダーステア一辺倒かというとそんなことはなく、軽いノーズは自在に向きを変えてくれるからオンザレールで楽しく走ることができる。
そんなドライビングでもレースカー並みのバケットシートは腰をしっかりと支えてくれて、大きな横Gにも耐えられる。けれど乗り心地が硬く舗装状態が良くないと上下に揺すられてしまうから、普段乗りにもう少し穏やかな方がいいという方にはA110GTが用意されている。
エンジンは横置きの1.8L直列4気筒ターボチャージャー付きで、ノーマル、S、GTともに共通だが、最高出力はノーマルの252psからSとGTは300psに引き上げられ、最大トルクもノーマルの320NmからSとGTは340Nmに太くなっている。
タイヤサイズはノーマルとGTは前205/40R18 86Y、後235/40R18 95Yだが、Sは前215/40R18 89Y、後245/40R18 97Yも大きくなっている。
SとGTでここまで明確にサスペンションの違いを主張していると、選ぶ方も自分の好みがはっきりしていればピタッと決めることができるだろう。(文:こもだきよし/写真:井上雅行)
アルピーヌ A110S 主要諸元
●全長×全幅×全高:4205×1800×1250mm
●ホイールベース:2420mm
●車両重量:1110kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1798cc
●最高出力:221kW(300ps)/6300rpm
●最大トルク:340Nm/2400rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:MR
●燃料・タンク容量:プレミアム・45L
●WLTCモード燃費:14.1km/L
●タイヤサイズ:前215/40R18、後245/40R18
●車両価格(税込):897万円
マツダ ロードスター 990S 主要諸元
●全長×全幅×全高:3915×1735×1235mm
●ホイールベース:2310mm
●車両重量:990kg
●エンジン:直4DOHC
●総排気量:1496cc
●最高出力:97kW(132ps)/7000rpm
●最大トルク:152Nm/4500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・40L
●WLTCモード燃費:16.8km/L
●タイヤサイズ:195/50R16
●車両価格(税込):289万3000円