どれだけ販売台数でSUVが圧倒しようとも、揺るぎない価値を示すのが911という存在である。ポルシェのプライドを築き上げたアイコンたるスポーツカーとともに、BEVも含めた多面的な戦略を展望する。(Motor Magazine2022年9月号より)
2ドアスポーツモデルの意義。ブランドの魂を示す911
車種バリエーションが拡充されるたびに販売台数も純増し、今や世界市場での新車販売台数は30万台超え。単純に「小規模メーカー」とは言えなくなりつつある成長ぶりを見せるのがポルシェ。
プラグインハイブリッドモデルはもとよりピュアEVの「タイカン」シリーズもローンチし、さらに次期マカンやボクスター/ケイマンのピュアEV化を示唆するなど、電動化への積極姿勢を示すのは、やはりヨーロッパブランドならではだ。
一方で、一部のライバル勢とは異なったスタンスを感じさせるのは、ポルシェはピュアEVの専業化には距離を置き、同ブランドの魂とも言える911シリーズに対しては可能な限り遅い時期まで内燃機関を搭載しておきたい、という思いが伝わってくる点である。
カイエンやマカンなど、それまでこのブランドが手掛けていた2ドアのスポーツモデルとはまったく毛色の異なるブランニューSUVが連続して大ヒット。とくに、それらが現在では世界最大の自動車マーケットである中国の市場で大いに売れたことで、冒頭紹介したような販売台数の伸長に結びついていることも特徴となる。
とはいえ、現在では数多くの選択肢が存在するSUVの中で、わざわざカイエンやマカンを指名してもらうことができるのは「それが911を生み出したメーカーの作品であるから」というのがポルシェ自身による分析である。販売台数的に、到底カイエンやマカンに敵わない状態にあっても、むしろ911の重要度は増すばかりだとも考えることができる。