芝生文化を全国に広めるしばふるプロジェクト
──ガイナーレ鳥取が推進する『Shibafull(しばふる)プロジェクト』とはどういうものですか。
塚野氏「プロサッカーチームの運営で培ってきた芝生の生産ノウハウや地域特性を生かし、遊休地などの地域の課題を解決しながら、地域活性化を実現しようというプロジェクトです。要するに、芝生ってこんなにいいものだよ、生育はこんなに簡単だよ、ということは多くの人々に知ってもらい、芝生文化を鳥取から全国に広めたいということなんです」
──壮大なプロジェクトですね。これは、どういうところから始まったのですか。
塚野氏「今日は米子のチュウブYAJIMAスタジアムまで来ていただいていますが、多くの方に協力をいただきながら、このスタジアムを自分たちで作ったことから始まります。もともとここは民間のゴルフ場でした。12年前にこの土地をお借りした時は、草ぼうぼうの状態でした。ここの地盤は砂地なのですが、そこを掘り起こして、グランドとスタンドを作りました。そして、芝生は鳥取県中部エリアにある、全国有数のスポーツ芝生会社である『株式会社チュウブ』にお願いしました。今でも珍しいクラブ所有のスタジアムです、土地はお借りしていますけど」
岡野氏「J1より恵まれた環境ですよ。選手がうらやましいくらい。こんな環境はまるで欧州のサッカーチームのようですよ」
──素晴らしいスタジアムです。でもこれが「しばふるプロジェクト」とどうつながるのですか。
塚野氏「実はこのスタジアム、当初から芝生の管理も自分たちでやっています。芝生の管理をすることによって、芝生の知識、育成のノウハウをたくさん蓄積することができました。このスタジアムは試合や練習など結構な頻度で使用していますが、プロチームの試合ができるクオリティを維持できているんです。そこで、そのノウハウを生かして芝生の生産を始めることにしました。スタジアムの近くのいわゆる耕作放棄地、農業の担い手を失って荒れ果てた土地で、地域で課題となっている土地をお借りしています。少しずつ増やして今では4万平方メートルの広さになりました。我々サッカークラブは芝生と切っても切れない関係でもありますし、芝生はほんとにいいもの、人を幸せにするものだという確信がありますので、いろいろ活動する中でそれを全国に広めていきたいとしばふるプロジェクトを立ち上げました」
──日本ではまだ芝生は一般的ではないですよね。まだまだ学校のグランドは土ですし、公園の芝生は立ち入り禁止です。
塚野氏「そうなんです。日本の芝生文化は欧米よりかなり遅れています。というのも、日本芝(高麗芝とか姫高麗芝)は庭など景観用に使われることが多く、生育が遅く管理はしやすいのですが、踏まれることに強くはありません。ですからグランドには向かないし、芝生は立ち入り禁止となってしまったのです。一方の西洋芝(ベントとかティフトン)は生育が早く、踏まれても強いのでスポーツに向いています。スポーツ芝と言われるのは西洋芝です。芝生がはがれても、根がはっていれば、目土をしてやればすぐに育ちます。西洋芝はいろいろな品種を植えることができるので常に緑を保てるのも特徴です。日本にスポーツ芝が本格的に入ってきたのは、Jリーグが発足した1993年あたりです」