5.2L V10自然吸気エンジンをリアミッドに搭載し、操る楽しさを追求した「ウラカン テクニカ」。2023年いっぱいで生産を終えるウラカンシリーズの集大成となるこのモデルに 西川淳氏がスペインの公道とサーキットで試乗。他モデルとの違いや魅力を教えてくれた。(Motor Magazine 2022年10月号より)

ランボルギーニV10ミッドシップカーの集大成

アヴェンタドールと共にランボルギーニの新時代を支えたウラカン。2014年に発売され、ウルスが登場するまではサンタアガタの主力モデルであって、ウルス登場後もブランドの世界観を全方位で表現するスーパーカーとして人気を博してきた。

画像: 性能と美しさを両立させたスタイリング。ディフューザーやスポイラーの形状などウラカンシリーズの中でももっともシャープな印象。

性能と美しさを両立させたスタイリング。ディフューザーやスポイラーの形状などウラカンシリーズの中でももっともシャープな印象。

そんなウラカンも23年いっぱいで生産を終える。次世代はプラグインハイブリッドシステムを備えたミッドシップスーパーカー。だからこそモデル末期であるにもかかわらず、大排気量の自然吸気V10エンジンを積んだウラカンにはマニアからの注目が集まっていた。

メーカーもまたそんなマーケットの盛り上がりに応えたかったのだろう。8年間、否、先代のガヤルドから数えたならば約20年間にわたってブランドを支えたV10ミッドシップカーの集大成というべきモデルを投入した。その名もウラカン テクニカだ。

テクニカは量産グレードとしては最後となるウラカン(厳密には4WDの限定車が別に用意されている)である。とはいえ、ありがちなファイナルエディションとは様相が異なっていた。既存モデルをそれらしくデコレートしただけの安直な仕立てなどではなかったのだ。確かにウラカンであることはクルマ好きならわかる。けれども、これまでのどのウラカンとも違うスタイリングが与えられた。

ある意味、モデル末期に登場するにしては大掛かり過ぎるモディファイを受けた贅沢な存在。テクニカのパフォーマンスまで知った今となっては、その価格設定がもはや「バーゲンプライス」だったと断言したい。

リア駆動のテクニカは640psのV10エンジンを積むため、性能的にも、そして見た目にもウラカンEVO RWDと同STOの間にちょうど割って入るモデルである。果たしてその乗り味はEVO寄りか、それともSTO寄りなのか。ヴァレンシアで開催された国際試乗会で確かめた。

STOよりも楽しくサーキットが走れる

まずはサーキットでのテスト。一周およそ4kmのリカルド トルモサーキットは珍しい左回りのサーキットで、チャレンジングなコーナーが多く、スーパーカーを楽しむにはもってこい。過去にはアヴェンタドールSやフォーミュラマシンで走った経験もあって、好きなコースのひとつだ。

画像: ドライバーを重視したスポーティなコックピット。スポーツシートにもテクニカ専用の素材を採用している。

ドライバーを重視したスポーティなコックピット。スポーツシートにもテクニカ専用の素材を採用している。

サーキットでのテクニカは歴代ウラカンのなかでももっともファンな一台だった。確かに1秒でも早く走りたいユーザーには間違いなくSTOの方がいい。なにしろ鼻歌まじりに汗ひとつかくことなくドライブしていても刻んだラップタイムは驚くほど速い。見た目にもわかるように空力が強力で、尋常ではなく踏ん張るから︑コーナーを含めて全域で速く走ることができる。速いのはSTOだ。

その点、テクニカはドライバーに多くの自由度を与えてくれる。オーバーステアが顕著に出るスポルトモードはもちろん、コルサモードでも振り回せるという点でSTOとはまるで違った走りの個性の持ち主だ。ランボルギーニのコルサモードといえばニュートラルステアが基本。正確無比なコーナーワークを身上とする。それゆえ速いが運転そのものは楽しいとはいえないというのが常だった。

ところがどうだ。テクニカのコルサモードは、少しだけれども後輪に自由度があってドライバーに積極的なステアコントロールを要求する。これが実に楽しいのだ。コルサモードでファンな唯一のランボルギーニかもしれない。

もちろん、スポルトモードならさらに楽しい。ウラカン自慢のフィードフォワード制御がいっそう成熟し、どんなにリアが流れ出しても立て直していける。少なくともそう思える。クルマによる制御の賜物であることはわかっているけれども、ドライブ中はまるでそう思わない。640psのリア駆動ミッドシップカーを自在に操っている感覚があるのだ。これほど楽しい経験など他にない。

午後はカントリーロードを中心に200km以上の行程をひとりでドライブすることに。

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