このモデルが本当に登場するとは、ちょっと予想外のハプニングにも思えるほど。てっきりプロトタイプだけかと捉えていたが、実はきっちりと商品化が進められていた。乗用(プロ)と商用(カーゴ)とあり、もちろん試乗したのは乗用仕様の5シーターモデルだ。(Motor Magazine 2022年11月号より)

一見、大柄なボディながら、市街地でも取り回しがラク

リアに搭載されている電気モーターは150kW(204ps)と310Nmを発生、車重2.5トン強のバスを100km/hまで10.2秒、最高速度は145km/hに達する。数字上ではやや物足りなさを感じるが実際に走り出すとEV独特のクイックなレスポンスで気持ち良い。またデンマークのハイウェイは最高速度130km/hなのでとくに不便はない。日本ではもちろんまったく文句のないレベルである。

画像: リアビューは可愛らしいというよりもT6カリフォルニアシリーズを想起させる。

リアビューは可愛らしいというよりもT6カリフォルニアシリーズを想起させる。

Cd値0.285と空力的に洗練されたボディは意外なほどに風切り音も少ない。ハンドリングはスタイルに似合わず、いつものフォルクスワーゲンらしくクイックでスポーティ、四隅にあるタイヤと床下に収納された重さ700㎏の駆動用バッテリーのおかげで低重心ゆえに、ロールも少なく安定、さらに高い快適性を提供している。また回転直径は11.1mと意外に小回りが利くので、市街地でも取り回しが楽だ。

注目の航続距離は、総電力量77kWhのバッテリー登載で423km(WLTP)と十分な距離を約束している。また充電は家庭用ウォールボックスなどの11kW/AC充電で8時間15分、175kWのDC急速充電では30分で264km走行が可能になる。

ID.BUZZはBEV専用プラットフォーム(MEB)の利点を箱型ボディで最大限に利用した実用的な乗り物であった。ただし、現在は世界中で武骨で男らしいSUVがブームになっており、この愛らしいソフトなBEVバスが各国の市場、とくにアメリカでどんな売れ行きを見せるか大いに気になるところではある。 

ただしフォルクスワーゲンの発表によれば、受注は9月なかばで1万2500台、しかし実はその内、本命であるカーゴバージョンが半分を占めている。国別に見るとノルウェー(3700台)、ドイツ(2700台)、オランダ(1200台)、そしてベルギー(1000台)と続いている。

2022年内の生産目標台数は1万50000台で、平均納車日数は6カ月と長い。日本もアジアでは有力な市場候補として挙げられたが具体的な導入日程は発表されなかった。

最後にドイツでの価格はベースモデルで6万4581ユーロ(19%付加価値税込み:日本円で約924万円)とそう安くはない。(文:木村好宏/写真:キムラ・オフィス)

フォルクスワーゲン ID.バズ プロ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4712×1985×1927-1951mm
●ホイールベース:2989mm
●車両重量(EU準拠):2546kg
●モーター:永久磁石同期電動機×1
●モーター最高出力:150kW(240ps)
●モーター最大トルク:310Nm
●バッテリー総電力量:77kWh
●WLTPモード一充電走行距離:402-423km
●駆動方式:RWD

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