アルカナ:FWDながら2モーターハイブリッドはレスポンス良好
続いて、アルカナ。エクストレイルよりはひとまわり小さい、ルノーのブランニュー クーペSUVだ。ボディスタイリングは5ドアクーペそのものといった感じで、車高(最低地上高)を下げてしまえば、普通の5ドアクーペにしか見えないほどスタイリッシュだ。
だが、パワートレーンは凝っている。2022年末現在では輸入車唯一のストロングハイブリッド「E-TECH(テック)」を採用しているが、駆動アシスト用と制御用の2モーターを組み合わせ、ドッグクラッチでエンジンとモーターを繋いでいる。エンジン側に4速、モーター側に2速のトランスミッションがあり、エンジンとモーターで動くと4×2で8速、合計14速だが3つは同じギア比になるので12速となる。
ルノーではディーゼルエンジンに代わるユニットとして、このE-TECHを開発した。同じアライアンス グループの日産e-POWERではダメなのか?と以前にルノー・ジャポンの担当者に聞いたところ、高速運転には不向きな(エンジンが回りっぱなしで燃費が悪くなる)e-POWERは、高速走行の多いヨーロッパでは適さないからということだった。
実際に試乗してインジケーターを見ていると、ストロングハイブリッドらしく頻繁にエンジンとモーターを使い分けているのだが、12段のシフトショックを感じることはなく、きわめてスムーズだ。エンジンのON/OFFも、ほとんど分からない。アクセルペダルの踏み加減に忠実に加速し、レスポンスも良い。
シフトにマニュアルモードはないが、この12速をヘタにマニュアル操作すると、むしろトラブルの素になるかもしれないと思えた。内外装にルノースポールのテイストが与えられているが、このクルマは肩ひじ張らずにフランス車らしく、オシャレに乗りこなすほうが似合っているだろう。
ブラック基調のインテリアは、赤いアクセントやカーボン調パネルも採用し、エクステリア同様に良いセンスでまとめられている。スタイルから想像されるよりリアシートは広いし、ラゲッジスペースもちょっとしたワゴン並みに使える。駆動方式はFFのみだが、最低地上高は200mmあるし、スタッドレスタイヤを履いていれば都会の積雪レベルなら問題ないだろう。とはいえ、過信は禁物だが。
SUV、ハイブリッド、同じような車両価格といった共通項があるとはいえ、この2台を比較して、どちらを買おうかと考えている人は、まずいないだろう。とはいえ、いまなお人気が持続中のSUV市場にはさまざまな選択肢が増えており、それはつまりハイブリッドやバッテリーEVなども含めたパワートレーンの選択肢も広がっているということ。これは、ユーザーにとってはうれしいものだ。
予算や使い方、そして何よりも気に入ったスタイルから、自分好みの1台を見つけ出す。クルマ選びの楽しみは、テクノロジーが進化しても変わっていくことはないのだから。(写真:井上雅行)