Fモデルの誕生がレクサスのV8エンジンを昇華させた
レクサスには現在、エンジン縦置きの後輪駆動系アーキテクチャーを用いたモデルが5つある。そのうち、LXとLSを除く3つのモデルに搭載されているのが「2UR-GSE」。自然吸気の5L V8というプロファイルは、かつてど真ん中のスポーツユニットとして主たる自動車メーカーが擁していた、あるいは持つことを目標としていたものだ。
ところが現在、見渡せばそんなエンジンを搭載したクルマは本当に数えるほどしかない。純然たるスポーツカーにおいても、この5~6年で軒並みダウンサイジング&ターボ化、加えて電動化されている。そういう、エンジン側からの視点でいえば、レクサスのこの3モデルは完全に絶滅危惧種だ。
クルマ好きにとって、それが憂慮すべきことであることに疑いはない。そもそもショートストロークの骨格設計となる内燃機というだけでも貴重なところにきて、7000rpmオーバーまでパワーをきちんと繋いでいく、回せば回すほど活き活きするその特性もまた貴重だ。
そんなクルマをいまだに3つも並べておけるのは、一方で電動化を先んじて手掛けてきたその実積のおかげともいえる。が、未来永劫それが続くわけはない。終焉へのカウントダウンは始まっていると見るべきだろう。というわけで今回は3モデル各々のキャラクターを吟味しながら、レクサスならではのスポーツモデルの価値を再認識したいと思う。
進化と熟成の足跡は数字にも表れている
その前に、まずは2UR-GSEのアウトラインを紹介しよう。
2UR-GSE誕生の背景には、レクサスのラインナップ強化において、そのスポーツイメージを際立てるべく作られた「F」イニシャルの存在が背景にある。
Fピラミッドの頂点に位置するのが2010年に限定発売されたスーパースポーツのLFA。とあらば、日常とサーキットとをシームレスに繋ぐ現実的なFもあるべきだということで企画されたのがIS Fだ。その下に、幅広く設定されることになるFスポーツのポジションを引き締める上でも、IS Fの存在は重要だった。
そのIS Fのために開発された2UR-GSEは、LS600h用に開発された2UR-FSEをベースに、ヤマハ発動機と共同でチューニングを加えたものだ。ボア×ストロークはそのままながら、吸排気経路やバルブ周りを含めてヘッドは一新。車体側の吸排気システム全体や冷却系、潤滑系も新設計とすることで、Fの由来でもある富士スピードウェイでの連続走行に耐えうるポテンシャルへと鍛え上げられた。
ちなみに2007年のIS F登場時、2UR-GSEのスペックは最高出力423ps/6600rpm、最大トルクが505Nm/5200rpm。最新の搭載車となるIS500は481ps/7100rpm、535Nm/4800rpmとなっている。この間、ヘッド周りの刷新や鍛造コンロッド、チタンバルブの採用、吸排気系統や燃料噴射など細かなところにまで手が加えられるなど、進化と熟成の足跡は数字にもしっかり表れているわけだ。