2009年9月のフランクフルトモーターショーでマセラティ グランカブリオがワールドデビューを果たしている。1950年に始まったマセラティ・オープンカーの歴史で初めての4シーターカブリオレはどんな魅力を持っていたのか。ここではイタリアのローマで開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年4月号より)

高級ブランドにはオープンモデルが不可欠

現在のマセラティ繁栄の礎となっているのは、2003年に登場した4ドアラグジュアリーサルーンの5代目クアトロポルテだ。このモデルのスタイリングはピニンファリーナが手がけたこともあり実に優美、しかも先進性も感じさせ、デビュー後7年が経過した今もまったくその魅力は衰えていない。

またメカニズム的には当時フェラーリ傘下にあったことで、様々なメリットを享受している。そして、全体的にはそれまでのモデルよりも信頼性が確実に向上していたこともあり評価は高く、新時代のマセラティを象徴するモデルとして、世界のプレミアム市場で受け入れられた。

そして、2007年にはクーペモデルのグラントゥーリズモがデビュー。これは当初6速ATのみの設定だったが、その後、クアトロポルテで実績のあるスポーティなトランスミッション「デュオセレクト(6速AMT)」を追加するなどで、ここまで人気を博している。

さて、ラグジュアリーサルーンのクアトロポルテと、ラグジュアリークーペのグラントゥーリズモのコンビで万全の体制かと思いきや、何かが足りない。そう、高級ブランドにはオープンモデルが不可欠なのだ。

それが2009年9月のフランクフルトモーターショーで発表された。その名は「グランカブリオ」、カブリオレではなく「カブリオ」というのが、イタリア流の洒落っ気だ。3本柱が揃ったことで、高級ブランドとしてのラインナップは、ひとまず完成したことになる。

そのグランカブリオの国際試乗会が、イタリアのローマで開催されたので、さっそくその模様を報告することにしよう。

画像: マセラティの3本目の柱となるモデルとして登場したグランカブリオ。優雅なスタイルと内に秘めた圧倒的な動力性能に感服した。最高速はオープン時が274km/hで、クローズド時が283km/hとなる。

マセラティの3本目の柱となるモデルとして登場したグランカブリオ。優雅なスタイルと内に秘めた圧倒的な動力性能に感服した。最高速はオープン時が274km/hで、クローズド時が283km/hとなる。

ルーフがないだけなのだがクーペと印象が大きく違う

試乗車は屋内の駐車場にあり、キャンバストップは閉じられた状態だったが、やはり美しい。そしてオープンにすると、その美しさはいっそう際立った。どんなモデルでもクーペのルーフを取り払い、オープンモデルにすると美しく感じられるものなのだが、グランカブリオの場合はその度合いが強いようだ。

Aピラーの付け根からリアシートサイドへ一直線に伸びるラインがきれいだ。また、クーペの場合はスタイリング全体から受ける印象は非常にスポーティなのだが、このオープンモデルは、スポーティというより優雅という印象が強いところが面白い。基本的なデザインは変わらないのだが、ルーフのあるなし、またちょっとしたデザイン上のアレンジで、ここまで全体の印象が変わるのかと少々びっくりした。

インテリアデザインも基本的にはグラントゥーリズモと同じだ。しかし、ルーフがないので改めていろいろな方向からじっくり眺めてみると、贅沢な造形であることがよくわかる。シートやドアトリム、フェシアなどがふくよかで、空間の使い方がうまいのだ。このあたりはいかにもイタリアの高級車といったところだ。ドイツ車はもちろん、イギリス車とも違うテイストだ。

画像: インテリアデザインは基本的にクーペのグランツゥーリズモと共通だ。パドルシフトは右がアップで左がダウンとなる。

インテリアデザインは基本的にクーペのグランツゥーリズモと共通だ。パドルシフトは右がアップで左がダウンとなる。

また、グランカブリオには2つではなく4つのシートが用意されているが、これは1950年の「A6Gフルアスパイダー」から始まるマセラティのオープンモデルとして初のことになる。そして、このリアシート座面はグラントゥーリズモより20mm高くなっている。ボディ補強の関係でシート下にある燃料タンクの形状が異なるためだそうだが、結果的にこれによりリアシートの開放感が増すことになっている。

ただし、ルーフを閉じた状態で180cm以上の人が座ると、頭が若干当たってしまう。上下方向に余裕は少ないのだが前後方向はたっぷりあるので、オープンにしているときには、大柄な人でもリアシートでじっくり寛ぐことができる。

ところで肝心のキャンバストップだが、開閉は30km/h以下ならば走行中も可能で作動にかかる時間は28秒だ。トップは3層構造になっており、インナーは手触りがよく、見た目も暖かくソフトな印象だ。このキャンバストップはベントレーやBMWで実績を持つ「EDSCHA(エドシャ)」製とのこと。また、オープン化にともなって、リアヘッドレストのすぐ後に、ロールオーバープロテクションが装着されている。

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