光るアクティブサスペンション「FAST」の存在
プロサングエはフェラーリにとってもっとも伝統的なラインナップである2+2クーペの延長ながら、4ドアフル4シーターの体を採ることで世界を驚かせた。コンセプト面での前身はFF/GTC4ルッソだが、高さ方向に振ったパッケージと観音開きの電動リアドアを採用することで、塊り感のあるデザインとともに乗降性や使い勝手を高めている。
搭載するエンジンは度のバンク角を持つ6.5L V12ユニット。最高出力725ps、最大トルク716Nmを発生、パワーと官能性を兼ね備えた世紀のフェラーリを象徴する内燃機だ。4WDシステムはGTC4ルッソの発展型となり車速カバレッジを高めた4RM-S evoを採用。8速DCTはリアアクスルに置かれるが、荷室床面はフラットでここでも使いやすさを意識している。
フェラーリはこのプロサングエをSUVではなく新種のスポーツカーと断言するが、それを裏付けるのがユニークなアクティブサスペンション「FAST」の存在だ。
48Vモーターでダンパーロッドを回転しながら伸縮させることで車高を調整、2つのスプールバルブで減衰の圧縮と伸縮の調整と、2つの系統を車両側の統合制御ユニットと連動させることで、悪路からオンロードのハイスピード域に至るまで、自在な姿勢や減衰の制御を実現する。
クルマとの「豊かな対話」を満喫。しかも感触は上質そのもの
ワインディング路では四肢をしっかり踏ん張らせながらロールを抑えつつも、荷重変化に応じたダイアゴナル姿勢をしっかり作り出す。
それがゆえにプロサングエはあらゆる速度域での旋回時にも、きちんとドライバーに運転実感を伝えてくる。この豊かな足まわりからの情報量のおかげで、実寸よりも俄然車体が小さく感じられる。
一方で、驚かされるのが常速域での快適性だ。サスペンションのダイナミックレンジの広さに加えて、素晴らしいサウンドを奏でる12気筒エンジンが、静かに湧き出るトルクで滑らかに車体を押し出すその上質な感触は、高級サルーンもかくやの感がある。
なるほどこれはSUVとはわけが違う。新種のフェラーリはそう納得できる驚きに満ちていた。(文:渡辺敏史/写真:フェラーリS.p.A)