「大排気量」「マルチシリンダー」「高回転高出力型」聞くだけでワクワクするこのワード。ここで紹介する2台はそのすべてに当てはまる、いまや数少ない絶滅危惧種の2ドアモデルである。見た目がカッコ良いだけじゃなく、運転して最高に気持ち良い、この2台の魅力を存分に味わう。(Motor Magazine 2023年4月号より)

より上質に洗練された改良型レクサスRC F

続いてレクサスRC Fに乗る。RC Fは、「ラグジュアリクーペ」だが、本格的スポーツカーであるレクサスLFAから受け継がれた走りのDNAが惜しみなく注ぎ込まれ、サーキットで磨き上げられたモデルだ。LFAのニュルブルクリンクでの開発、進化の様子を(ハンドルこそ握っていないが)何年にもわたってレースを通じて間近で見てきたので、そのDNAと聞くだけで気持ちが熱くなる。

画像: レクサス RC F “パフォーマンスパッケージ”。サーキットでタイムも狙えるが、快適さを犠牲にしていないのはレクサスならでは。

レクサス RC F “パフォーマンスパッケージ”。サーキットでタイムも狙えるが、快適さを犠牲にしていないのはレクサスならでは。

今回の改良では、切削光輝やスーパーグロスブラックメタリック塗装などの表面処理を施した、新たなデザインの専用ホイールが装備され、足元が光る。インテリアは、マルチメディアシステムにタッチスクリーン式が採用され、それに伴って、インストルメントパネルのデザインが刷新された。控えめにレイアウトされたスピードメーターが330km/hスケールであり、地味にパフォーマンスをアピールしている。

5L V8という、今ではホントに貴重な存在ともいえる大排気量エンジンに8速AT(SPDS)が組み合わされ、最高出力481ps/7100rpm、最大トルクは535Nm/4800rpm。 

今回の企画でフィーチャーされた2台は、キーワードこそ共通だが、決して直接的ライバルでないことは、見た瞬間、乗った瞬間わかる。たとえば、RC Fのドアを開け乗り込むと、乗降しやすいよう、ハンドルが自動的に動いてくれ、さっそく「おもてなし」を実感する。軽量化のために無駄をすべて削ぎ落としたGT4 RSとは異なり、RC Fはあくまでもラグジュアリークーペの延長線上にポジショニングされる。

正直、RC Fは今までにサーキットも含め何度も乗る機会があったため、「確認程度」の軽い気持ちで走り出した。ところが、高速道路をクルージングして、「えっ!」となった。何、このスッキリした乗り味は。

「乗り心地の良さ」はレクサスのコアバリューのひとつだから従来から快適性は良好だったが、改良型は明らかにそのレベルが異なっていた。単にタイヤからの入力が柔軟なだけでなく、より洗練された上質さが伴う。真円のものが何の抵抗もなく転がっている様をイメージさせる。

熟成されたいまこそ乗りたい、大排気量エンジンの2台

今回の改良では、「ホイール締結をナットからハブボルト化した」ことがキモとなる。当然ながら、剛性が上がることは容易に想像できるが、ここまで効果を体感できるとは思わなかった。もちろん、サスペンションや電動パワーステアリングもリチューニングされてはいるのだが。

画像: マルチシリンダー大排気量の魅力を存分に楽しめる熟成の2台。(左:ポルシェ718 ケイマン GT4 RS、右:レクサス RC F“パフォーマンスパッケージ”)

マルチシリンダー大排気量の魅力を存分に楽しめる熟成の2台。(左:ポルシェ718 ケイマン GT4 RS、右:レクサス RC F“パフォーマンスパッケージ”)

さらに、ワインディング路での気持ち良さもアップしている。確認したところ、フロントとリアのボディ剛性バランスを見直したとのこと。ハンドルを切るとフロントノーズの入りも良いが、さらにリア位相までの連続的な動きがいかにもFRらしく、クルマを操っている感が強い。

V8サウンドを轟かせながら、サスペンションストロークを感じつつ優雅さを損なうことなくコーナーを駆け抜けていくのが気持ち良いクルマだ。

今回の2台は、ベースモデルが発売されてから年月を重ねているので、パッと見の新しさこそ感じないが、その分、「熟成」の奥深さを味わえるクルマだと言える。ただ速いだけではない、グッドハンドリングだけでなく、ロードカーとしての扱いやすさ、安心感のある「進化」と「深化」。

そして、やっぱり、マルチシリンダー大排気量エンジンの奏でるサウンド、回転の上昇とともに盛り上がるパワーの臨場感はたまらない。魅力的な2台だが、今しか乗れないとなると、なおさら欲しくなる。(文:佐藤久実/写真:井上雅行)

レクサスRC F“パフォーマンスパッケージ”主要諸元

●全長×全幅×全高:4710×1845×1390mm
●ホイールベース:2730mm
●車両重量:1720kg
●エンジン:V8DOHC
●総排気量:4968cc
●最高出力:354kW(481ps)/7100rpm
●最大トルク:535Nm/4800rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・66L
●WLTCモード燃費:8.5km/L
●タイヤサイズ:前255/35R19、後275/35R19
●車両価格(税込):1455万円

ポルシェ718ケイマンGT4 RS主要諸元

●全長×全幅×全高:4456×1822×1267mm
●ホイールベース:2482mm
●車両重量:1415kg
●エンジン:対6DOHC
●総排気量:3996cc
●最高出力:368kW(500ps)/8400rpm
●最大トルク:450Nm/6750rpm
●トランスミッション:7速DCT(PDK)
●駆動方式:MR
●燃料・タンク容量:プレミアム・54L
●WLTCモード燃費:7.6km/L
●タイヤサイズ:前245/35R20、後295/30R20
●車両価格(税込):1870万円

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