発表会に選ばれた会場は、フェラーリに相応しい鮮やかで明るい雰囲気が特徴
日本でローマ スパイダーが初公開された2023年5月18日は、5月とは思えないほど気温が高く雲一つない快晴で、関東では今年初の猛暑日となった。豊洲市場にほど近い「キラナガーデン豊洲」内に設けられた特設の発表会場を訪れた。
いかにもフェラーリらしい真っ赤なプレスパスを受け取り会場の敷地内に入ると、そこには白い砂浜を感じる白を基調とする大きなステージが現れる。フェラーリのロッソ・コルサをイメージした深紅のテントが、いい感じのアクセント。鮮やかで明るい雰囲気に、心が躍った。
やがてローマ スパイダーがステージ上に現れた。V8エンジンの太い迫力のあるサウンドと共に、13.5秒で開閉するソフトトップを披露しながらその姿を現した。フェラーリ・ジャパンのフェデリコ・パストレッリ社長が登壇し、このローマ スパイダーが誕生するまでのストーリーを語った。
興味深かったのは、ローマが発表された当時にオープンモデルの存在は決定していなかった、というエピソードだ。それまでのフェラーリにとってオープンモデルはポルトフィーノがその役を担っていたが、フェラーリ・スタイリング・センターのフラヴィオ・マンゾーニ氏が「ローマにオープンモデルがあったら良いんじゃないか」と発想したことで、ローマ スパイダーが誕生したのだ。
54年ぶりのソフトトップを備えたフェラーリのフロントエンジンモデル
フェラーリにとって、フロントエンジンモデルにソフトトップを備えたモデルは1969年に登場した356 GTS4が最後だった。つまり今回、日本上陸を果たしたローマ スパイダーは、実に54年ぶりのオープンFRモデルの復活となる。
そもそもフェラーリにとってローマというモデルは、現代にいたるまでのフェラーリのヘリテージを継いだ特別なモデルである。その開発テーマは、イタリア語で「La Nouva Dolce Vita」(新しい甘い生活)。これは、1950年から60年代のイタリアのライフスタイルを現代的に再解釈して生まれたコンセプトだという。
2019年にデビューしたローマは、先の尖ったシャークノーズやワイドなフロントボンネット、フェンダーのしなやかなカーブを持っている。それはまさに、250GTベルリネッタ・ルッソ(1958年)や250GT 2+2(1960年)といった歴史的なGTモデルを彷彿とさせるものだ。
ローマ スパイダーに与えられたソフトトップは美しさと機能性を見事に融合する
そんなローマに新たに追加されたオープンモデルのスパイダーは、なんといっても幌がソフトトップであることが最大の特徴だ。発表会で登壇したフェラーリ・ジャパンのフェデリコ・パストレッリ社長によると、ソフトトップを採用したことで専用のファブリックやステッチをチョイスするという多くの選択肢をもたらし、パーソナル性を高めているという。
デザインはベースとなるクーペモデルと同様に、流麗でなめらかなルーフラインが特徴で、オープンモデルとしての機能性を見事に兼ね備えている。わずか13.5秒で開閉するソフトトップは、時速60kmまで稼働する優れた機能性に加えて、オープン時には極めてコンパクトかつスマートに収納される。またファブリック生地を5層構造にすることで、ハードトップと同等の静粛性を確保する。
オープンモデルは、幌をしまうことでトランク容量が犠牲になってしまうことが最大のデメリットといえるが、ローマ スパイダーはコンパクトに収納することが可能。おかげで、クラス最大の255Lというトランク容量を確保している。
ローマ スパイダーに搭載されるエンジンは、クーペモデル同様の排気量3855ccのV型8気筒ガソリンツインターボエンジンで、最高出力620ps、最大トルク760Nmを誇る。このV8エンジンの実力は折り紙つきで、インターナショナルエンジンオブザイヤーを何度も受賞している。
トランスミッションにはSF90 ストラダーレで採用した8速のデュアルクラッチ式を採用する。多段化されたギアボックスの採用で、燃費性能とシフトチェンジしていく楽しさを実現している。
特許取得のウインドディフレクターは、オープン時の快適性に大きく寄与する
ローマ スパイダーには、オープン時に起こる風の巻き込みを抑えるために特許を取得した、独自形状のウインドディフレクターが装備されている。
この機能はリアシートのバックレストに一体型で装着されており、センターコンソールにある操作スイッチを押すことで、自動的にウインドディフレクターが回転する仕組みだ。この位置に装備することで、頭部周辺の乱流抑制効果がこれまでのオープンモデルと比べて約30%向上したという。
この機能によってキャビン内に吹き込む風を、乗員から離れた場所にそらすことができる。風切り音が少なく非常に快適なドライブを楽しむことができそうだ。
デュアルコクピット形状のインテリアもまた、クーペと共通するローマにおける大きな特徴のひとつ。
コクピットを囲むように縁取られた丸いパイピングは、パッセンジャー席も同様の処理が施されている。このように左右が独立しているようなインテリアデザインを備えることで、運転席以外に座る人もパーソナル性を備える特別感が与えられている。
ローマに掲げられた2+クーペというテーマは、スパイダーでも健在だ。これは通常の2+2でも2シーターでもないことを表現していて、後席は子どもが座れる程度のスペースしかないが、荷物などを置くには便利である。
この2+スタイルを与えることで、ローマ スパイダーはエレガントで洗練されたファストバックプロポーションを作り上げている。