EQシリーズ拡張の勢いには驚かされるばかりだが、その仕上がり具合にも隙きがない。単に駆動源を変更するだけではなく、価値観そのものの転換とその哲学が、クルマの隅々にまで表現されているのだ。ミドルサイズSUVカテゴリーのニューBEVに乗った。(Motor Magazine2023年6月号より)

巧みな駆動力の制御と心地良いドライバビリティ

今回、主に試乗したのはEQESUV350 4マティック。電気モーターは前後に1基ずつ搭載され、最高出力が合計215kW(292ps)、最大トルク765Nmとなる。バッテリー容量は90.9kWh、航続距離は最長551kmとされる。

画像: EQEシリーズは、EQSと同じくSUVとセダンの両面でラインナップされる。

EQEシリーズは、EQSと同じくSUVとセダンの両面でラインナップされる。

この電費を最大化するべく、ハードウエアにも改良が加えられている。まずひとつは、4マティックのフロントアクスルへのDCU(ディスコネクトユニット)採用。不要な時に前輪を電気モーターから完全に切り離すことで、約6%の電費向上に繋げている。もうひとつがヒートポンプユニット。電気モーター、インバーター、バッテリーから発生する熱を暖房に利用することで、こちらは約10%の電費改善を可能にするという。

走りの印象は、まず軽やかさが光る。転がり出しの良い発進は2.5トンにもなる車重を意識させないものだし、その後の加速も伸びやか。蹴飛ばすようなダッシュで圧倒するのではなく、心地良いドライバビリティで魅了する。そんな走りを実現している。

エアサスペンションを標準装備とすることで、乗り心地は非常にソフト。それでいてフットワークが軽快なのは、低い重心、最大10度まで操舵を行うリアホイールステアなどの効果だろう。

さらに見逃せないのが、4マティックの制御だ。ドライビングモニターを見てると、コンフォートモードでは積極的に前輪の駆動力を活用している様子。DCUは断続にドグクラッチを使っているが、走っていて存在を意識させることは皆無だ。スポーツでは常時4WDに。いずれにせよ駆動力の制御は巧みで、ドライブが楽しい。

オフロードモードも用意される。試乗ルートに設定されていたフラットダートでその実力を見ようと思ったのだが、電動4WDはそもそも制御が緻密で走破性に優れ、専用モードでなくても余裕で走破できてしまった。

高効率ぶりが形に表れたデザインや、さまざまな部分で見られる環境への行き届いた配慮、軽やかなフットワークに高い走破性と、EQE SUVには単に内燃エンジンを電気モーターに置き換えたのではない、最新の電動SUVとしての魅力がふんだんに詰まっている。BEVユーザー予備軍にとって、大いに説得力のある1台と言えるはずだ。(文:島下泰久/写真:メルセデス・ベンツ日本)

メルセデスEQ EQE SUV350 4マティック主要諸元

●全長×全幅×全高:4863×1940×1686mm
●ホイールベース:3030mm
●車両重量:未発表
●モーター:交流同期電動機✖️2
●モーター最高出力:215kW(292ps)
●モーター最大トルク:765Nm
●バッテリー総電力量:90.6kWh
●WLTPモード航続距離:460-551km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:265/40R21(試乗車装着)

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