BMW 新型M2は、強靭な走りと洗練されたフィールが絶品。「変わらないこと」の大切さに、気付かされた

エンジンへの贅沢な悩みと操る喜びに満ちた走り味

試乗車には迷わず6速MT仕様を選んだ。走り始めて、まず嬉しくなったのはそのカチッとしたシフトフィール。これまでのBMWのMTはこの点、さほどホメられたものではなかったが、新しいM2のMTは、純粋に変速が楽しいものになっている。

伝家の宝刀と言うべき直列6気筒ユニットは、低速域から分厚いトルクを発生させる一方、トップエンドまで至極スムーズに吹け上がり、豪放なパワーを発生させる。ただし、なまじ良いエンジンに仕上がっているだけに回す意味合い、もしくは歓びが薄く感じられるのが、難点と言えば難点。もっと高回転高出力型でも良かったかもしれない・・・というのは、もちろん贅沢な悩みである。

あるいは、それより鮮烈だったのがフットワークの切れ味だ。ハンドルの操舵レスポンスはまさに正確無比で、切り始めた瞬間からシャープに向きが変わり始める。決して過敏なわけではなく、クルマと完璧にシンクロした感じと言えばいいだろうか。

荒野の中の、ハイスピードなだけでなく路面がうねり、舗装が荒れたワインディングロードでも、類まれな前輪の接地感のおかげでグイグイと曲がっていくが、決してリアが軽いわけではなく、挙動はまさにニュートラルステア。サーキットでも試してみたかったのは事実だが、それでも操る歓びを大いに満喫できたことは間違いない。

最初に「目新しい何かがあるわけではない」と書いたが、そのドライビング体験は先代とは明らかに別物と言える。とくに、そのボディの剛性感、正確な操縦性には舌を巻いた。実はその分、車重は1775kgと決して軽くはないのだが、乗っていてそれを意識させられることは皆無だった。

先代M2は世界で大成功を収めそのうち日本は世界で5番目の市場だったという。ピュアな魅力を研ぎ澄ませ、このご時世に1000万円（日本価格）を切る価格を実現した新型Ｍ２が、一層のヒットとなっても不思議ではない。（文：島下泰久／写真：BMW AG）

BMW M2主要諸元

●全長×全幅×全高：4580×1887×1403mm
●ホイールベース：2747mm
●車両重量：1775kg（EU準拠）
●エンジン：直6DOHCツインターボ
●総排気量：2923cc
●最高出力：338kW（460ps）／6250rpm
●最大トルク：550Nm／2650－5870rpm
●トランスミッション：6速MT
●駆動方式：FR
●燃料・タンク容量：プレミアム・52L
●WLTPモード燃費：9.8－10.0km／L
●タイヤサイズ：前275／35R19、後285／30R20
●車両価格

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