2010年3月のジュネーブオートサロンでアウディRS 5がワールドプレミアされた。“RS”の名が冠したアウディのホットモデルとして初のクーペボディとなるものだった。Motor Magazine誌はその試乗記を、ポルトガルで行われた国際試乗会からレポートしている。今回はその模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年5月号より)

搭載エンジンは伝統的な高回転型のV8ユニット

1992年に登場したアウディRS 2は、315psのターボエンジンとクワトロシステムをワゴンボディに搭載した非常にユニークなモデルだった。このモデルの正統な後継が380psのパワーを持ったRS4で、最初は伝統を引き継いでワゴンボディ、つまりアバントしか提供されていなかった。しかし、2005年から排気量が4.2Lに拡大されたV8エンジンが搭載されたのを機に、4ドアセダンもカタログに載るようになった。

画像: 最高速度はスタンダード仕様では250㎞/hでリミッターが働くが、希望すれば280km/hまで引き上げることも可能である。

最高速度はスタンダード仕様では250㎞/hでリミッターが働くが、希望すれば280km/hまで引き上げることも可能である。

こうした歴史を辿ったRS系にニューモデルが誕生した。搭載エンジンは伝統的な高回転型のV8だが、ボディ形式はアバントやセダンではなくA5クーペがベースだ。

そんなわけで旧RS4と比べると、この新しいハイエンドスポーツモデルはホイールベースが10cm長く、重量も40kgほど増加している。キャビンに入るとフロントは問題ないが、リアは大人にはちょっと狭い。撮影のために後席に座った183cmのカメラマンは、アクロバット的な姿勢で出入りしなければならなかったし、席についても膝が前席につかえ、さらに頭が天井に当たるのを気にしていた。

しかしここはプラス2のスポーツクーペと割り切るのが正しい理解なのかも知れない。確かに流れるようなルーフライン、19インチあるいは20インチタイヤを収めるためのオーバーフェンダー、まるで路面に張り付いたようなクーペデザインを改めて眺めると、リアに子供用のプラス2のシートがあるだけでもいいと納得する。スポーツシート、カーボンとピアノブラック、そしてアルミのアプリケーションが与えられたインテリアもスポーツ性と高級感を巧みに演出している。

延長されたホイールベースと増加した重量を考えると、ダイナミクス性能はあまり多くを期待できないと思われるだろう。しかし、アウディは新しいパワートレーン技術を開発してこれに対処している。まったく新しいギアを持ったセンターデフを採用したのである。このシステムはセルフロッキング機能を持ち、反応も遅延なく非常に素早い。前後のスタンダードトルク配分は40対60であるが、アクスル間では70対30から15対85まで変化する。これまでのモデルは60対40から20対80であった。

加えてESPソフトウエアを使って左右の車輪に個別に相対的に回転力を与えるトルクベクトリングも期待できる。コーナリング時にイン側の車輪に軽くブレーキをかけることによって、相対的に外側の車輪にトルクが掛かることになり、アンダーステアを相殺することが可能になる。この効果はてきめんで、コーナーでのアンダーステアは確かに軽減され、スポーティで軽快なハンドリングを楽しむ余裕が出てくる。

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