この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第1回目は、戦後の日本のモータリゼーションの幕開けを告げた名車で、1955年に発売された「トヨペット・クラウン」だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

新型エンジンとフロント独立懸架で、乗用車としての要求を満たす。

画像: ダッシュボードは大型のアルミダイキャストにメタリック塗装。横長のスピードメーターも特徴的だった。細身の大径ステアリングもクラシカルながら豪華感がある。

ダッシュボードは大型のアルミダイキャストにメタリック塗装。横長のスピードメーターも特徴的だった。細身の大径ステアリングもクラシカルながら豪華感がある。

トヨタは新設計の乗用車を開発する計画を昭和27(1952)年にスタートさせていた。それが形となったのが昭和30年1月にR型エンジンを搭載してシャシを新設計して登場したクラウンRSだった。R型エンジンにコラム3速MTが組み合わされ、最高速度は100km/hを達成していた。ポイントとなるシャシは本来的にはヨーロッパ車で採用され始めていたモノコックボディが理想だったが、まだ経験のない当時のトヨタでは無理だったためラダーフレームを使っている。ただ、そのまま用いるわけではなく工夫によってフロア位置を下げた。これによりボディのフロア位置を従来車よりも30mm程度低くすることができ、フレームの剛性を高めることができる。

サスペンションは、フロントにダブルウイッシュボーン、リアが3枚リーフスプリングのリジッド式だ。フロントだけとはいえ、もう一度独立懸架式に挑戦したのは英断だった。採用にあたってはサスペンションアームやコイルスプリングを太くすることで、容易に壊れない設計とした。リアサスペンションもリーフスプリングの板間摩擦(重ねたリーフスプリング同士が摩擦することで発生する抵抗)が少なく乗り心地の良さが際立った。

以後、車種追加やマイナーチェンジなどを重ねて、長期に渡ってトヨタの高級車として支持されていくことになる。このクルマに刺激を受けて、他国産自動車メーカーも乗用車を生産し始める。日本の基幹産業として自動車製造が日本経済復興の鍵となったのはもちろん、多くのクルマ好きを育てていく第一歩を記したのだ。

トヨペット・クラウン主要諸元

●全長×全幅×全高:4285×1680×1525mm
●ホイールベース:2530mm
●重量:1210kg
●エンジン型式・種類:R型・直4 OHV
●排気量:1543cc
●最高出力:48ps/4000rpm
●最大トルク:10.0kgm/2400rpm
●トランスミッション:3速コラムMT
●タイヤサイズ:6.40-15 4PR
●新車価格:101万4860円

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