「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、メルセデス・ベンツ SL(6代目)だ。

路面にじゅうたんを敷き詰めたような乗り心地

画像: スポーティかつ高級感あふれるコクピット。オーディオはオープン走行でも低音再生に優れる「フロントバス」システムを採用。

スポーティかつ高級感あふれるコクピット。オーディオはオープン走行でも低音再生に優れる「フロントバス」システムを採用。

そして気になるのは、もっともぜいたくなサスペンションとして知られるフル油圧アクティブサスの「ABC」だ。これはパッケージとセットで選べる。スタビライザーも要らないABCサスは極上の乗り心地を約束してくれる。まるで路面にじゅうたんを敷き詰めたような滑らかな乗り心地だ。

ワインディングでは俊敏にステアリングに反応し、コーナーが待ち遠しい。従来の直線番長的(直線だけが得意なスポーツカー)スポーツカーではなく、俊敏な身のこなしを得意とする万能選手になったみたいだ。一方、コンベンショナルなサスにはアダプティブダンパーもオプションで用意される。日本ではSL550にはABCサスが標準で、SL350にはメカニカルサスが設定される予定だ。

フルオープンで走るとエアスカーフなど気が効いた装備がありがたい。しかもリアのウインドリフレクターはとても効果的だった。これを使うとほとんど風の巻き込みがない。スペインの高速道路を走っていても、となりの人と普通に会話が楽しめる。

さらにもっと面白いのはフロントの二重構造のアルミフレームの一部を使い、低音用のスピーカーに利用しているオーディオだ。ボディ剛性が高いので共振しにくいから、ガンガンとボリュームを上げて聴くことができる。また、ワイパーの洗浄液を後方に飛ばさない配慮もなされ、機能的には超高速域でもワイパーが使えるので雨の日の視界確保にはうってつけだ。

大幅な軽量化という大きな目標を達した新型SLは、速さだけでなく、極上の乗り心地をも手に入れることに成功した。汗をかかないスポーツカーも良いものだ。

画像: メタルトップの採用により、クローズド状態ではハードトップのクーペのように静粛性が高い。後方視界も悪くない。

メタルトップの採用により、クローズド状態ではハードトップのクーペのように静粛性が高い。後方視界も悪くない。

メルセデス・ベンツ SL500(欧州仕様) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4612×1877×1315mm
●ホイールベース:2585mm
●車両重量:1785kg
●エンジン:V8 DOHCツインターボ
●総排気量:4663cc
●最高出力:320kW(435ps)/5250rpm
●最大トルク:700Nm(71.4kgm)/1800-3500rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・75L
●10・15モード燃費:未発表
●タイヤサイズ:前255/40R18、後285/35R18
●当時の車両価格(税込):1560万円

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