2009年11月、フォードの6代目「マスタング」がビッグマイナーチェンジを受けて、マッチョになって登場している。そして、2010年5月にはその特別仕様「マスタング V8 GT アピアランスパッケージ」がデビュー。4.5L V8エンジンを搭載した上級グレードの「GT」がベースで、ちょっと派手めのアピアランスで話題となった。その登場間もなく、Motor Magazine編集部ではサンセットゴールドのボディカラーのコンバーチブル仕様で試乗テストを行っている。今回は当時の誌面からその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年8月号より)

東京=憧れ=クルマという図式をお土産に持って帰ったことだろう

マスタングコンバーチブルに乗れるという高揚していた気持ちを抑え、冷静さを装いキーを受け取って走り出す。右折して編集部へ戻る……はずだったがなぜか左折して遠回りしてみたくなった。明日の天気予報は雨、開けるなら今しかない。意を決して路肩にマスタングを停めオープンする。ロックをはずし電動のスイッチを押すだけなので簡単、全開で再始動だ。

画像: メーターまわりにはカーボン調パネルやアルミ調の素材が使われたり、ドアの内張にギャロッピングホースがレイアウトされる。

メーターまわりにはカーボン調パネルやアルミ調の素材が使われたり、ドアの内張にギャロッピングホースがレイアウトされる。

天候は曇り、気温は20℃、これなら大丈夫、と思ったのもつかの間、走っているうちに気温がぐんぐんと下がりついに16℃にまでなってしまった。風を快適に感じる体感温度は10℃そこそこだろう。“寒い”。もう我慢の限界。そこでシートヒーターのスイッチオン。う〜ん、心地よい。

途中、修学旅行のバスに出会ったので横に並びしばらくゆっくりと併走する。将来のある若者に、東京の景色とともにマスタングコンバーチブルの美しさを上から眺めてもらうためだ。こうした中高生の心に〝東京ってすごいクルマが走っているところなんだなぁ〟というイメージを植え付けることができれば成功だ。彼ら(彼女ら)はきっと東京=憧れ=クルマという図式をお土産に持って帰ったことだろう。

それ以降も、なかなか編集部へマスタングコンバーチブルは近づこうとしない。まっすぐに戻ればほんの5分ほどの距離なのに、結局1時間以上も走りまわってしまった。なんだかマスタングが遠くへもっと遠くへと誘っているような気がしたのだ。それはあくまで無意識ではあるが大好きなオープンカーから降りたくないという願望の現れだったのかもしれない。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:島村栄二)

フォード マスタングV8 GTコンバーチブルアピアランスパッケージ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4785×1880×1415mm
●ホイールベース:2720mm 
●車両重量:1670kg
●エンジン:V8SOHC
●排気量:4600cc
●最高出力:235kW(319ps)/6000rpm
●最大トルク:441Nm(44.9kgm)/4250rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:490万円(2010年当時)

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