2019年にデビューしたポルシェ初の量産BEVスポーツカーがタイカンである。新たにタイカンシリーズに追加された「GTS」に試乗し、そのパフォーマンスを確認した。(Motor Magazine 2023年9月号より)

パワートレーンも足まわりも洗練度が高まったGTS

ポルシェ初であることはもちろん、専用アーキテクチャーを持つBEVとしても世界に先駆けるスタートを切ったタイカン。そのワールドプレミアは2019年秋・・・といえば、今から約4年近く前のこととなる。

画像: ポルシェの他モデルと同じく、後から追加されるGTSの完成度は高い。

ポルシェの他モデルと同じく、後から追加されるGTSの完成度は高い。

その間、数多のBEVが登場したわけだが、今なお鮮度を保っているのはBEVの先進性とポルシェらしさとを巧く繋げたデザインのおかげでもあるだろう。ちなみに日本ではセダン(標準車)とクロスツーリスモの2バリエーションが展開されているが、欧州ではクロスツーリスモをオンロードモデル寄りに化粧直ししたスポーツツーリスモというモデルも用意されている。

グレード面ではご存知のとおり、近年はラインナップの完成を告知する役割も兼ねた「GTS」が追加されたのが直近のトピックだ。

911やカイエンなどの例をみるに、GTSは性能的ウェルバランスを狙ったグレードともみることができるが、タイカンの場合はグレード別でもっとも長い航続距離を実現したこともひとつの売りとしている。ちなみにその距離はWLTCモードで492km。タイカンターボの場合は最長で452kmというから、1割ほど足が長いということになる。

ローンチコントロール時に得られる最大アウトプットは598ps/850Nmというから、ターボやターボSには敵わずとも存分に速い。最高速は250km/hに規制されるが0→100km/h加速は3.7秒というから、4L V8ツインターボを搭載するパナメーラGTSにも増して俊足ということになる。その上で、正札同士で比べればパナメーラGTSよりもタイカンGTSの方が安価というのがポルシェのBEVに対する意気込みを示しているかのようだ。

時を経て熟成が進み「丸く」なった?

タイカンのパッケージは4ドアハードトップとしてみても、さすがに広々とはいえない。パナメーラより30mm以上低い全高に加えて、床面にある93.4kWhのバッテリーが室内の天地高を侵食するがゆえだが、後席の床面はバッテリーを敷かずに足置きのスペースを稼ぎ出したりと細かな配慮もなされており、座り心地は見た目ほどに厳しくはない。

画像: 物理スイッチを極力、排除したインテリア。マイクロファイバー素材をふんだんに使う。

物理スイッチを極力、排除したインテリア。マイクロファイバー素材をふんだんに使う。

前席からフェンダーの両峰を通してみる景色の抜け感はものの見事に911との繋がりを示してもいる。そしてハンドル越しにみるフローティングメーターパネルも言わずもがな、911の反復的な形状だ。こういうモチーフ足り得る意匠があの手この手で現れるところが彼らの築いてきた歴史の強みだろう。

走り始めからの印象は、過去の幾度かのタイカンシリーズの試乗とはちょっと異なるものだった。

パワートレーンも足まわりも洗練度が高まったのだろう、以前のように端々で感じていた些細ながらも刺々しい応答感が丸く均されて、いわゆるこなれた感じがぐっと増している。装着タイヤはターボSと同じフロント265、リアは305幅という極太の21インチでPCCBも非装着と、乗り心地面での利はとても期待できそうにないが、それでも小さなオウトツから大きなギャップまでさらりといなしてくれるその優しさは以前のモデルでは感じられなかった。

全開加速時の速さも、曲解されたBEVらしさとは一線を画し、ズドンと腹に押し込むような重々しい加速の質にも一定の配慮が感じられる。構えていても首から持っていかれるほどの乱暴さはもはや不要と考えたのだろう。こういう走りの変質をみると、初期に乗ったターボSの豪放な走りにも何かしらの違いがみられるのではないかと興味が増してくる。

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