現行モデル発表日:2019年5月24日
車両価格:750万円
電動化の時代に向けてエンジンの価値を再提示
PHEVの330e Mスポーツは「電気自動車性能の高さ」で2020年の追加以来、注目を集めている。改めてそのシステム概要とスペックを記すと、2L直4DOHCターボエンジンに電気モーター+リチウムイオンバッテリーを加えたパワートレーンで、システム最高出力は292ps/420Nmである。満充電時のEV走行可能距離は56.4km(WLTCモード)だが、実質的には40km前後だろう。
以前、330eの前期型を試した際の印象では「日常生活は案外、EV走行のままで行ける」だった。40kmも走ってくれれば、買い物や送り迎えなどの普段使いには十分。何より電欠しない安心感は大きい。
BEVとしてドライブフィールが、エンジンモデルとほぼ変わらないというのも魅力のひとつ。これは電動化時代を見据えた進化というべきだが、逆に言うと新しい乗り味を期待する向きには物足りないかもしれない。
ワインディングロードでは電気モーターの瞬発力を活かした走りを堪能した。前後重量バランスとバッテリー配置が絶妙で、重量増による嫌味をほぼ感じさせない。シャシとサスペンション、ステアリング系統が成熟し、ハンドルと前輪とが非常に滑らかにつながっているという印象を強く持つ。
3シリーズは、そもそもスポーティなサルーンとして鳴らす名だが、いっそう正確に動かせるようになった。その上でより懐の深い乗り心地を実現する。重いモデル(大バッテリーを積む電動車など)の開発に積極的に取り組んできた成果が、比較的軽いモデルにも好影響を与えているように思う。
エンジンも良かった。普通の4気筒ガソリンモデルと直に比べたわけではないけれど、力がある分、アクセルペダルのコントロールで走らせやすい。
これ以上、いったい何を望むというのか。望むとすればストレート6の官能性くらいか。いや、この4気筒だって今となっては耳に心地よく、十分に官能的なフィールを持っている。なるほど330eは紛れもなく上等な3シリーズだ。電動の時代が来ようとも、BMWらしいサルーンのあり方は変わらないという、それは強い意志の表れだと受け止められる。(文:西川 淳)
BMW 330e M スポーツ 主要諸元
全長:4725mm
全幅:1825mm
全高:1445mm
ホイールベース:2850mm
重量:1820kg
エンジン種類:直4DOHCターボ+モーター
総排気量:1998cc
システムトータル最高出力:215kw (292ps)
システムトータル最大トルク:420Nm(42.8kgm)
駆動方式:FR
トランスミッション:8速AT
駆動方式:FR
サスペンション形式:前ストラット 後マルチリンク
タイヤサイズ:前225/45R18、後255/40R18
乗車定員:5名