ドライバーとの一体感が圧倒的に濃密で深い
ワインディングロードで「SPORT」モードに切り替えると、ギアダウンとともにエンジン音が炸裂し、レスポンスがさらに研ぎ澄まされる。サスペンションも締め上げられるが、これに関しては日本の公道レベルでは硬すぎるかなというところ。
ウラカン テクニカには好みで設定できる「EGOO」モードが用意されず、ここでサスペンションだけソフトに変更できないのは、ちょっと不満だ。
鋭い突き上げをガマンしながらコーナーに入っていく。駆動力が伝達されず、ギア比固定のステアリングは手応えがダイレクトで、きわめてリニアなレスポンスを返してくる。切れ味は鋭いが、挙動がややデジタル的とも思えるLDS付きに対して、操舵すると、かすかなロールを伴いながらタイヤがグリップを発揮して旋回モードに入っていく、一連の挙動がよりリアルに伝わってくるのだ。
しかも、そうやって旋回姿勢をうまく作れたら、今度はリアがまさに欲しい分だけジャストで回り込んでくる。おそらくはLRS=後輪操舵を中心とした制御のおかげだが、あたかもタイヤに絶妙なスリップアングルがついて、車体がややインを向きながらラインに乗っていくような絶妙な姿勢でターンしていけるのである。これは快感と言うほかない。
シャープさだったらEVO RWDの方が上回るかもしれないし、絶対的なグリップ、トラクションではSTOに軍配が上がるのだろうが、ウラカンテクニカのフットワークはドライバーとの一体感が何よりも高い。
4輪のグリップ力と対話しながら持てるポテンシャルを引き出す走りができる人にとっては、過去これほど響くウラカンはなかったのではないか。今回はサーキットで「CORSA」モードを試す機会は得られなかったが、少なくとも公道レベルではもっとも濃密なドライビングファンを味わえるモデルと言えそう。
率直に言ってウラカンで、あるいはこの手のスーパースポーツで、こういう種類の走りの歓びを味わえるとはまさか思っておらず、期待以上の楽しさに嬉しくなってしまった。2023年の春にアメリカで試乗したウラカン ステラートも鮮烈な走りの魅力をもったモデルだったのだが、このウラカンテクニカは、同じウラカンでありながらしっかり別の楽しさが実現されていて、その開発能力の高さにも敬服させられた次第である。
もちろん、ガヤルドからウラカンへと続いた系譜の次の展開にも期待しないわけにはいかない。その一方で、まさにこのV10ミッドシップ時代の集大成モデルたるウラカンテクニカが今、乗っておく価値のある1台であることは間違いない。(文:島下泰久/写真:伊藤嘉啓)
ランボルギーニ ウラカン テクニカ主要諸元
●全長×全幅×全高:4567×1933×1165mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量(乾燥重量):1379kg
●エンジン:V10DOHC
●総排気量:5204cc
●最高出力:470kW(640ps)/8000rpm
●最大トルク:564Nm/6500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:MR
●燃料・タンク容量:プレミアム・80L
●WLTPモード燃費:6.9km/L
●タイヤサイズ:前245/30R20、後305/30R20
●車両価格(税込):2999万2917円