スポーティモデルながら一般道での走りは全車快適
まずは一般道と高速道路を走る。ゴルフはR、「R」の名から構えて乗ると拍子抜けするほど、一般道ではホッとする乗り味だ。標準車よりはダイレクトに路面を拾う向きはあるが、「ホットハッチ」という表現は似つかわしくないほど穏やかで、上質感がある。操作系は一見シンプル。だが、インフォテインメントの使い勝手はあまり良くない。
このシーンではC43もスポーツモデルの印象はない。乗り心地も良く「きわめて快適なセダン」だ。メルセデスをよく知る人はともかく、「これがスタンダードモデルです」と言われても納得してしまうだろう。
高速道路はACCで安心かつ快適に走れる。ところが、ドライブモードを2つのスポーツモードのうち「S」にするとかなりスパルタンな印象となり、乗り心地も変化する。不快とまではいかないが、高速道路であえて「S」や「S+」を選ぼうとは思わないほど足まわりが締まる。そしてようやく、単なるセダンではないという気配を感じる。
A110 Sは、見紛うことなきスポーツカーだ。よって、一般道では、ほかの2台とは明らかに異なるドライブフィールだ。でも、一般道でも高速道路でも、路面からの入力はダイレクトだが、まったく苦にならない乗り心地なのだ。
路面の継ぎ目で跳ねるようなこともない。トリコロールカラーを各所に取り入れた、シンプルでオシャレなインテリアも居心地が良い。ゴルフRやC43は液晶メーターになってここぞとばかりに機能を詰め込んだ感があるが、A110 Sは、インパネもシンプルで、走行モード切り替え時も含め、グラフィックがとても美しい。
さて、続いてはワインディングロードに入っていく。ここでのゴルフRの動きは予想とは異なるものだった。FFっぽくも4WDDっぽくもない、まるでミッドシップかと思うような、ドライバー中心のヨーの出方、ロール感なのだ。もちろん、回頭性も良く、安心してハンドリングを堪能できる。
C43は、走行モードが快適性重視の「C」だと「ちょっとロールが大きいかな」と感じ、「S」にすると、路面のあたりの滑らかさは維持しながらロールは抑えられる。そして「S+」では、俄然スパルタンな印象となり、路面のオウトツを拾うザラザラした乗り心地にはなるが、走って楽しい感覚は増す。低速域から滑らかな加速が気持ち良いが、ブレーキのソフトなタッチにやや違和感を覚えた。
A110 Sの走りは、ソリッドな感じだが、荒れた路面でも突き上げはなく、ステアリングの剛性感も高い。そしてヒラヒラと舞うようにコーナーを駆け抜ける感覚の走りが心地良い。ハンドルの「S」ボタンを押すと、シフトダウン時にマフラーからパンパン音が出たり、エンジンサウンドが変わったりと、一般道においてモードの差が一番わかりやすい。
本格的スポーツカーの場合、公道ではパフォーマンスを引き出せずかえってストレスを感じることもあるが、A110 Sは「雰囲気」でも十分楽しませてくれるのだ。(文:佐藤久実/写真:永元秀和、井上雅行、根本貴正)