世情に合わせてスポーツカーの世界でも小排気量化と気筒数の減少は避けられなくなりつつある。しかし、だからといってスポーツカーがなくなったり、走る楽しさを味わえなくなったわけではないことを、アルピーヌ A110 S/フォルクスワーゲン ゴルフR/メルセデスAMG C 43 4マティック の3台の4気筒スポーツカーが600km以上のロングドライブとサーキット走行を通じて実証している。(Motor Magazine 2023年10月号より)

スポーティモデルながら一般道での走りは全車快適

まずは一般道と高速道路を走る。ゴルフはR、「R」の名から構えて乗ると拍子抜けするほど、一般道ではホッとする乗り味だ。標準車よりはダイレクトに路面を拾う向きはあるが、「ホットハッチ」という表現は似つかわしくないほど穏やかで、上質感がある。操作系は一見シンプル。だが、インフォテインメントの使い勝手はあまり良くない。

画像: アルピーヌ A110 S。シートや足まわりを考えると乗り心地はあまり期待できないと予想していたが、思いのほか快適で600㎞以上のロングツーリングも苦ではなかった。

アルピーヌ A110 S。シートや足まわりを考えると乗り心地はあまり期待できないと予想していたが、思いのほか快適で600㎞以上のロングツーリングも苦ではなかった。

このシーンではC43もスポーツモデルの印象はない。乗り心地も良く「きわめて快適なセダン」だ。メルセデスをよく知る人はともかく、「これがスタンダードモデルです」と言われても納得してしまうだろう。

高速道路はACCで安心かつ快適に走れる。ところが、ドライブモードを2つのスポーツモードのうち「S」にするとかなりスパルタンな印象となり、乗り心地も変化する。不快とまではいかないが、高速道路であえて「S」や「S+」を選ぼうとは思わないほど足まわりが締まる。そしてようやく、単なるセダンではないという気配を感じる。

A110 Sは、見紛うことなきスポーツカーだ。よって、一般道では、ほかの2台とは明らかに異なるドライブフィールだ。でも、一般道でも高速道路でも、路面からの入力はダイレクトだが、まったく苦にならない乗り心地なのだ。

路面の継ぎ目で跳ねるようなこともない。トリコロールカラーを各所に取り入れた、シンプルでオシャレなインテリアも居心地が良い。ゴルフRやC43は液晶メーターになってここぞとばかりに機能を詰め込んだ感があるが、A110 Sは、インパネもシンプルで、走行モード切り替え時も含め、グラフィックがとても美しい。

さて、続いてはワインディングロードに入っていく。ここでのゴルフRの動きは予想とは異なるものだった。FFっぽくも4WDDっぽくもない、まるでミッドシップかと思うような、ドライバー中心のヨーの出方、ロール感なのだ。もちろん、回頭性も良く、安心してハンドリングを堪能できる。

C43は、走行モードが快適性重視の「C」だと「ちょっとロールが大きいかな」と感じ、「S」にすると、路面のあたりの滑らかさは維持しながらロールは抑えられる。そして「S+」では、俄然スパルタンな印象となり、路面のオウトツを拾うザラザラした乗り心地にはなるが、走って楽しい感覚は増す。低速域から滑らかな加速が気持ち良いが、ブレーキのソフトなタッチにやや違和感を覚えた。 

A110 Sの走りは、ソリッドな感じだが、荒れた路面でも突き上げはなく、ステアリングの剛性感も高い。そしてヒラヒラと舞うようにコーナーを駆け抜ける感覚の走りが心地良い。ハンドルの「S」ボタンを押すと、シフトダウン時にマフラーからパンパン音が出たり、エンジンサウンドが変わったりと、一般道においてモードの差が一番わかりやすい。

本格的スポーツカーの場合、公道ではパフォーマンスを引き出せずかえってストレスを感じることもあるが、A110 Sは「雰囲気」でも十分楽しませてくれるのだ。(文:佐藤久実/写真:永元秀和、井上雅行、根本貴正)

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