4WDの2台は確かに速い。だがしかし・・・
最後のステージはショートサーキットのスパ西浦。ここでは、一般道で体感できない領域でのスポーツ度をチェックした。ただし、タイヤやブレーキを労って走るよう指示があったため、フルアタックのような走りは控えた。
まずはゴルフRでコースイン。ドライブモードは「レース」を選択。サスペンションのストローク感はあるが、コーナーでのロールは少なく姿勢や挙動が非常に安定している。ブレーキペダルのタッチはソフトだが効きもコントロール性も良い。そして、ブレーキのコントロールによって旋回姿勢を作れ、弱オーバーステアで気持ちよくコーナリングできる。ヘアピンのような深いコーナーでも、わずかにブレーキを残して待っているとキューッと巻き込むように旋回していくのが気持ち良い。
そして、立ち上がりのトラクション性能がさすが4モーションといった感じで、ハイパワーではないが、確実にトラクションを路面に伝える。4モーションと電子制御のシンクロが絶妙で、ドライバーとしてはたまにESPの介入を感じるが、それも極めて自然で、一切不安を感じさせない高い安定性でスポーツドライビングを楽しめた。
続いてC43。ドライブモードは「S+」。まず印象的だったのは、ストレートでの加速フィールで、メチャクチャ速い。そして「エレクトリックエグゾーストガスターボチャージャー」のおかげだろう、低速域からターボラグなく滑らかに、力強くスピードに乗っていく。ストッピングパワーは十分だし、シフトダウンも速くて気持ち良い。
ただしブレーキは、タッチが軽くソフト過ぎて心許ない。またペダルストロークが少なく、ターンイン時のブレーキコントロールがしにくい。コーナーではロールが大きく、アンダーステアも強い。ハンドリングはワインディングロードの領域の方が気持ち良く、サーキットではパワフルな加速を楽しめる、そんなキャラクターだ。
ちなみに前後重量配分は、ゴルフRが61対39、C43が54対46と、ゴルフRの方がフロントヘビーだが、ゴルフRの方がコーナリング性能が高い。ホイールベースやサスペンションチューニングなどさまざまな要素があるが、ゴルフRは、ワインディングロードで感じた独特なモーメントでもわかるように、トルクベクタリングなどのソフトウェアを積極的に使い、ドライバーに違和感を抱かせずに旋回性能を高めている。
最大の魅力はストレートの速さではなく、コーナリングだ
最後にA110 Sを試す。ドライブモードはスポーツモードを選択。アクセルペダルを踏み込んだ瞬間から、エンジンサウンドが気持ち良い。
そして圧倒的な軽さがあり、スペックから受けるイメージよりもはるかに速い。トランスミッションは7速DCTで、パドルによるマニュアル操作もできる。コーナー手前でシフトダウン操作をすると、適正速度まで落ちた時にダウンする、シフト予約ができる賢さに驚いた。だが、クルマまかせのATモードでも十分楽しい。
ストレートエンド到達時の速度は、ゴルフRに対してC43、A110 Sの順に約10km/hずつ高いイメージだ。ゴルフR、C43は4WDなのでトラクション性能は良い。A110 Sも悪くないが、いかに軽さが速さに効いているかがおわかりいただけるだろう。
もっとも、A110 Sの最大の魅力はストレートの速さではなく、コーナリングだ。ブレンボ製ブレーキの効きも抜群だった。多くのクルマはABSが介入すると、ハンドルを切り込んでもアンダーステア傾向となる。
だがA110 Sは、ちゃんと止まりつつ曲がってくれるのだ。そして、とにかくハンドリングが気持ち良い。旋回性能が高いからコーナー進入時にそれほどブレーキを残す必要もないが、ブレーキから旋回の繋がりが難しい。そして頑張り過ぎるとブレーキでもアクセルでもオーバーステアになる。
とにかく楽しいが、速く走ろうと思うとそれなりにスキルは必要で、簡単ではないから飽きない。スパ西浦は、サーキットとしては路面ミューが低いから、タイヤのグリップに頼るような走りは通用しないので、なおさら面白いけど難しい。でも、サーキットでとくに魅力が炸裂していたのはA110 Sだった。