ハイパワーは美味。だけどのんびり走るのもまた幸せ
午前中は、幹線道路をメインとした一般道を走ったが、久しぶりの<正統派セダン>がとても新鮮。ハイパワーは大好物だが、パフォーマンスをひけらかさないどころか、このようなシチュエーションでは、まったくスピードを出そうという気にならない。ゆとりあるトルクを感じながら、のんびり走ることを許容してくれた。
奥入瀬渓流沿いの道路は狭く、場所によってはかなり荒れている。だが、もちろん、滑空する白鳥の如く、サスペンションは路面を追従しつつもボディはフラットを保つ。ハンドルを介して、ちゃんと路面状況は伝わるが、ステアリングコラムを伝っての振動など皆無だし、お尻に伝わる入力も至って優しい。
足元はピレリP ZEROを履く。ご存じのとおり、スポーツタイヤであり、コンフォートタイヤではないのにこの乗り心地は素晴らしい。
渓流を過ぎ十和田湖に向かうとワインディングロードになった。街中で小回りが効く印象だったAWSが<よく曲がる>印象となり、グッドハンドリングを楽しめる。
このクルマのエキゾーストシステムにはアダプティブバルブコントロールが採用されていて、SPORTモードでアクセルペダルを踏み込むと野獣の咆哮へと変化する。せっかくなので試してみた。
確かにアクセルペダルを<踏み込む>と咆哮を奏でるが、かなり意図的かつ刹那的なアクセル操作の結果だ。だって、60km/hでも1600rpmほどで走れるから、回転数は上がらず咆哮も聞こえない・・・。
もちろん、アクセルレスポンスやクルマの動きはSPORTモードらしいセッティングを楽しめるが、サウンドを楽しみたいのなら、むしろ高速道路での加速の方がわかりやすいかもしれない。
アクティブAWD がトルクを最適に配分
ところで、青森空港を降りた時には外気温が36度あり、東北の地でも暑さは変わらない印象だったが、奥入瀬に向かうとどんどん気温が下がっていった。そして、渓流を過ぎ、十和田湖畔を走っていると突然の雨。日差しは強いままなのに・・・。かなり大きな雨粒が地面から跳ね返っていたが、こんな状況でも心配ない。
デフォルトではほぼFRだが、路面状況に応じてAWDが最適なトルク配分となり、最大のグリップが保たれるからだ。そして気温は26度まで下がったが、湿度は高いからそれほど快適ではなかった。
もう<残暑>の時期なのに、一向に涼しくなる気配がない。むしろ東北の方が暑いって、どういうこと?なんて思いながら、この後、高速道路で盛岡まで移動して、約300kmのドライブは終了した。
翌日は、盛岡市内にある岩手銀行赤レンガ館〜茣蓙九(ござく)あたりをドライブ。赤レンガ館は公開施設や多目的ホールとして現在は営業し、他にも昔ながらの個人商店が立ち並び風情ある一角となっている。そして、15分ほど走れば岩山展望台に着く。ちょっとしたワインディングロードもあり、展望台からは盛岡市内を一望できる。盛岡駅前に戻り、盛岡冷麺のランチ。これが超絶品!!
口福を噛み締めながら、一路東京へ。約600kmのロングドライブだが、まったく苦にならない。ACCとレーンアシストがあれば快適安心。そして飽きると自分で運転したり。一般道を含め、ドライブモードも色々試してみたが、結局、「BENTLEY」が一番賢い選択に思えた。
快適といえば、シートマッサージ。部位やモードまで選べる。シートが合わないクルマだと、サービスエリアでクルマから降りた際、しばらく腰が伸びないが、このクルマは休憩のたび、颯爽とクルマから降りられた。
途中、普段なかなか経験できないリアシートにも座ってみた。スペース広々、ヘッドレストはふかふか、シートリクライニングやブラインドもありと、どうぞおくつろぎください、と言わんばかり。極楽。そして思った。ACCはドライバーにとっても楽だが、同乗者にとっても、乱暴な運転されるより遥かに快適な装備であると。
こうして、地元の美味しいものをいただき、自然豊かな景色を堪能し、充実したコト体験ができた。疲れ知らずで楽しめるのも、ベントレーならではであった。(文:佐藤久実/写真:村西一海)
ベントレー フライングスパー スピード主要諸元
●全長×全幅×全高:5325×1990×1490mm
●ホイールベース:3195mm
●車両重量:2437kg
●エンジン:W12DOHCツインターボ
●総排気量:5950cc
●最高出力:467kW(635ps)/6000rpm
●最大トルク:900Nm/1350-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム油・90L
●WLTPモード燃費:6.6km/L
●タイヤサイズ:前275/35R22、後315/30R22
●車両価格(税込):3286万8000円