レースにルーツがあると実感させる仕様のエンジン
エンジンの型式名称はLT6。GMのV8としてはお馴染みのコードながら、伝統のOHVユニットと共通するのはボアピッチのみ、つまり完全新設計のDOHCユニットだ。
排気量5.5Lを生み出すボア✕ストロークは104.3✕80.0 mmと今日びの自動車用エンジンとしては極端なショートストロークで、鍛造クランクは高回転・高出力化を前提とするフラットプレーンを採用する。二次振動の増加を抑えるためにショート化によるピストンスピード低減と併せて、鍛造チタンコンロッドや超ショートスカートの鍛造アルミピストンなどムービングパーツの軽量化を徹底した。
これらのパーツを供給するオーストリアのパンクル社は、F1やモトGP向け車両の高精度な鍛造部品を開発するほか、市販車ではカワサキのZX-10RR用のコンロッドやピストン等を手掛けている。とあらば、GT3車両と7割の部品を共有するという話もむべなるかなといったところだ。
そういう本気の背景を見ていくにつけ、現行のスポーツカーでもっとも成り立ちが似ているクルマといえばポルシェ911GT3だということが伝わってくる。
排気量やエンジン骨格は異なれどレーシングユニットとしての転用も前提とした設計、スペック的にいえば1シリンダー辺りの体積やボアストローク比、圧縮比、リッターあたりの出力などは非常によく似ている。その数値に至るチューニングの追い込みぶりもまた然りだ。
ちなみに日本仕様のZ06は、最高出力は規制の関係で本国仕様とは異なる排気系を採用するため646psと24ps低い。が、その発生回転域は8550rpmと、メーターパネル上ではまさにイエローとレッドの境界線上だ。つまり8600rpmとメーカー側が指定するレッドゾーンまで、きっちり回し抜くことですべてを出し切る、強烈な仕様となっている。
このZ06と同様に、GTカテゴリーのベース車両としての立ち位置を指向する同級のモデルとして考えられるのはアストンマーティンヴァンテージだ。また、前型がGT3カテゴリーでの最大勢力と化したメルセデスAMG GTも、先日発表された新型でその流れを継承するとみるのが自然だろう。
これらが搭載するのはツインターボのV8だが、Z06は自然吸気という点が、市販モデル同士で見てもひとつの個性となっている。ちなみに自然吸気の高回転型マルチシリンダーユニットを搭載する同級のスポーツモデルといえば、他にはレクサス LC500やランボルギーニ ウラカンといったところだろうか。