レーシングカーと並行して開発されたコルベット「Z06」
世界に名だたるハイパフォーマンスなスポーツカー、その認知度については基本的に欧州ブランドの独壇場だ。それは能力を証明するステージでもあるモータースポーツでの発信力が図抜けていたこともあるだろう。それも含めて、露出機会を巧みに操るブランディングの巧さも無視はできない。
だとすればその機会を利用して、スポーツカーとしての名声を確たるものにしようと考えたのが2000年前後のアメリカ車、GTカテゴリーにおけるダッジ ヴァイパーでありシボレー コルベットである。
とりわけコルベットは2000〜2010年、C5〜C6世代の間に、マーケティング的にもっとも重要なル・マン24時間レースでの常勝組へと成長。欧州ではごく一部のマニアに支えられてきた銘柄が、ピークには年間1万台規模でユーザーを増やしていくほどの人気を集めた。10年代には市販車としても著しい成長を遂げたC7世代が再びル・マンで優勝、再びコルベットの天下が訪れるかのように思われたわけだ。
が、以降はミッドシップ勢の台頭によりC7の戦績は沈み続けてきた。もはやFRレイアウトで勝てる場ではないほどに、周囲のパフォーマンスが上がったという側面は否めない。車体をより速く前に進めるには後ろにエンジンを置くしかない。コルベットが60年以上にわたって描き続けてきた理想像は、幾度もコンセプトカーとして世に示されてきたリアミッドシップだったわけだが、結果的にそれが勝つための必然として実現したことはなんとも感慨深い。
かくしてMR化を果たしたC8コルベットにおいて、その核心であるLM−GTEカテゴリーでの勝利のためにファクトリーレーサーのC8.Rと完全並行で開発されたのがこのZ06だ。
ちなみにC8.Rは2023年のル・マンにおいて悲願のクラス優勝を果たしたが、GMはこの春に実質ワークスでのレース参戦終了を発表。24年以降はカスタマー向けにGT3カテゴリー用のレーシングカーの供給とサポートを行うとしている。当然ながらそのGT3モデルもZ06がベースとなり、たとえばエンジンはパーツの7割程度が共用になるという。