広がりを見せる水素の利活用
トヨタが実証実験の場にオーストラリアを選んだ理由は、かの地の政府がカーボンニュートラルを巡る取り組みへの協力について非常に積極的であり、関連するチャレンジに対しても法的側面からの課題についても寛容な対応をしてくれるから、なのだといいます
日本(の政府)はそういった面について、今一つ融通が利かないのでしょうか。試乗したハイエースの高い完成度を考えれば、「まんまこのクルマ」ではなくても、同様のメカニズムにコンバージョンしたスーパー箱型トランスポーターを作って、国内でも「実証実験」に臨めそうです。
なにしろ水素エンジンは、さまざまな「可能性」を秘めています。たとえばスーパー耐久シリーズで2023年シーズンからトヨタが取り組んでいる、液化水素の利活用は、水素エンジン車の弱点である燃料搭載量の問題を一気に解消するかもしれません。
マイナス253度という極低温状態での取り扱いなど、克服すべき課題は多々あります。それでもたとえば、既存の水素ステーションの施設を拡大活用することができるのは、普及に関しては大きなメリットになりそうです。えば、既存の水素ステーションの施設を拡大活用することができるのは、普及に関しては大きなメリットになりそうです。
さらにトヨタは、水素エンジンをベースに、弱点と言われる低回転域のトルク不足を補うためにハイブリッド化する仕様なども研究しているのだとか。その根底には、今そこにある熟成された技術をうまく活用してCO2削減を目指す、という目標があります。
FCEVも含めて、水素によるリアルなモビリティの可能性を広げている一方で、普及の段階に向けても、非常に地に足のついた展開が計画されているようです。たとえばハイスペックな水素エンジンを搭載した「水素スペシャル」的なモデルは、今のところ開発する予定はありません。
ことほどさように、てっきり「未来のモビリティ」だと思っていた水素エンジンは、いつの間にかそうとうリアルな次世代モビリティへと急速に進化していました。なにより、コンバージョンという普及に向けた万人受けしそうな可能性には、大いに期待したいところです。