この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第22回目は、デザインにこだわったマツダ・ファミリア セダンの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

理想のファミリーカーへの挑戦

R360クーペ→キャロル→キャロル600と乗用車のバリエーションを下から拡大してきたマツダが、次のステップとして800ccクラスにファミリアを投入したのは昭和38(1963)年9月だった。

画像: ファミリアの歴史は昭和38(1963)年9月に発売された「商用車(バン)」から始まった。その源流を戦前の商用3輪車に持つ東洋工業(当時)らしい成り立ちだ。

ファミリアの歴史は昭和38(1963)年9月に発売された「商用車(バン)」から始まった。その源流を戦前の商用3輪車に持つ東洋工業(当時)らしい成り立ちだ。

市場の動向を探るため商用車(バン)からスタートしたのは、商用車で力をつけてきたマツダらしい選択だ。その1年後の昭和39(1964)年、第11回東京モーターショーで待望の4ドアセダン800がお披露目。参考出品ではなく、開催中の10月1日に発売された。

当時から「自動車のもっとも重要な要素はデザイン」と考えていたマツダだが、ファミリアについては社内のデザイン能力の育成がマツダ発展には不可欠との認識から、入社間もない若手デザイナーの案を採用したという。

ボディは前後にサブフレームをもつ環状骨格を採用したセミモノコックだ。エンジンはキャロル360及び600用の発展型となっている。

随所に、高度な製造技術を擁するアルミ合金を採用

キャロル600に対し、ボア4mm/ストローク10mm拡大して782ccのロングストロークタイプとしたマツダお得意の「白いエンジン」が採用され、シリンダーブロック&ヘッド、クラッチハウジング、ミッションケースに高度な製造技術を要するアルミ合金を採用。冷却効率アップと同時に、ミッションアッセンブリーも含めてエンジン重量を約113kgに収めるという軽量化も実現している。

画像: セダン投入を機にシリンダーブロック&ヘッドほか随所にアルミ合金を採用した通称「白いンジン」を搭載した。ロングストロークながら6000rpmという高回転で42psを発生した。

セダン投入を機にシリンダーブロック&ヘッドほか随所にアルミ合金を採用した通称「白いンジン」を搭載した。ロングストロークながら6000rpmという高回転で42psを発生した。

4ドアセダンに1カ月遅れて2ドアセダン800を、翌昭和40(1965)年11月にクーペ1000を追加し、バリエーションを広げている。新設計の1000cc直4 SOHC/68psエンジンを搭載し、最高速度145km/h、0→400m加速18.9秒(公表値)の俊足を誇った。

マツダ・ファミリア セダン800デラックス(1964・SSA型)諸元

●全長×全幅×全高:3765×1465×1385mm
●ホイールベース:2190mm
●車両重量:740kg
●エンジン型式・種類:SA型・直4OHV
●排気量:1782cc
●最高出力:42ps/6000rpm
●最大トルク:6.0kgm/3200rpm
●トランスミッション:4速MT(コラムシフト)
●タイヤサイズ:6.00-12 4P
●新車価格:54万8000円

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